初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

 夕方に降り出した雨は本降りとなり、ざあざあと降る雨音が否応なく耳に入ってくる。月は隠され、黒い沼を覗いたように向こう側が見えない。ひときわ強い風が吹き、窓枠を揺らした。まるで、心の中の荒れ模様をそのまま映し出したかのようだ。

(……どうやったら君の本音を聞けるんだ?)

 エリアナに頼ってもらえない。その事実にベルトランは打ちひしがれた。

 ◇◇◇

 何の進展もないまま、一週間が経った。
 どうすれば、心を開いてもらえるか。その答えは出ないままだったが、焦りだけが募っていく。一番の理想は、彼女の口から自発的に話してもらうことだ。
 だが悠長に待っていていたばかりに、取り返しのつかないことになってしまったら──。
 悔やんでも悔やみきれない。もう迷ってはいられなかった。

「旦那様。こちらが奥様の日記帳でございます」

 書類仕事をしていた手を止め、ベルトランは顔を上げた。
 黒檀の執務机に、執事が日記帳を置く。エリアナは王都にやってきた友人に会うため、朝から出かけている。観劇のボックス席も手配させたし、本人からも帰りは遅くなると聞いている。