☆
「先輩って、好きな人いるんですか?」
いつも通りの放課後。
僕は先輩にずっと気になっていたことを聞いた。
「…なに、急に」
読んでいた本で口元を隠して、ちょっぴり赤くなる先輩こと森田亜美先輩。
「いやぁ、別になんでもありませんけど…ってなんですかその顔」
前に座る先輩はさっきの赤い顔はどこへいったのやら。目を逸らして居心地悪そうにしていた。
「だって、いっくんわかってるでしょ?こんな私に好きな人なんていないって」
先輩はいつも自分のことを「こんなわたし」とか「わたしなんか」と言う。
僕には正直理解できない。
確かに、先輩は絶世の美女でも、古城に閉じ込められたお姫様でもなんでもない。
他の女子と比べれば口は悪いし、メイクだって全然してこない。
すうっとなぞるように先輩を見る。
少し太めで下がり気味の眉。
丸っこい鼻。
小さい口。
サラサラストレートの髪(本人は嫌がっていたが)。
そして太った体…と先輩はよく言うけど、多分いつもダボダボなパーカーを着てて着膨れしてるだけで、本当はそんな太ってないと思う。
痩せてるかは…正直わかんないけど。
「まあ、そりゃ先輩が誰かを好きになってもその目、眉毛、鼻、口、髪、太った体、直さないと両思いにはなれないですね」
結局、僕の口から出た言葉はそれだった。
別にそんなことは思ってないんだけど…
最初先輩と会った時からこんなだったから、今更変わるのもなんか癪で、毒舌のまんまだ。
いや、これが素なのかもしれないけど。
「なにそれっ!?…って、全部ほんとすぎて言い返せない…」
全部嘘なんですから、言い返してくださいよ、先輩。
「あっ、落ち込まないでください。先輩にもいいところなんて…一つ…くらい…」
そんな先輩をからかってやろうと、あざとい声を出してみる。
その声を聞いた途端、先輩は伏せていた顔をパッとあげ、期待に満ちた目で僕を見つめてきた。
まるで捨てられた子犬(…いや、先輩なら、うさぎとかのほうが似合うか?)が拾ってくれそうな飼い主を見つけたかのような、そんな感じだ。
「…ありませんね」
ガクっ、と先輩がくずれおちた。
…やっぱり、小動物っぽいな。

