毒舌いじわる男の本音。




「先輩って、好きな人いるんですか?」

いつも通りの放課後。

僕は先輩にずっと気になっていたことを聞いた。

「…なに、急に」

読んでいた本で口元を隠して、ちょっぴり赤くなる先輩こと森田亜美先輩。

「いやぁ、別になんでもありませんけど…ってなんですかその顔」

前に座る先輩はさっきの赤い顔はどこへいったのやら。目を逸らして居心地悪そうにしていた。

「だって、いっくんわかってるでしょ?こんな私に好きな人なんていないって」

先輩はいつも自分のことを「こんなわたし」とか「わたしなんか」と言う。

僕には正直理解できない。

確かに、先輩は絶世の美女でも、古城に閉じ込められたお姫様でもなんでもない。

他の女子と比べれば口は悪いし、メイクだって全然してこない。

すうっとなぞるように先輩を見る。

少し太めで下がり気味の眉。

丸っこい鼻。

小さい口。

サラサラストレートの髪(本人は嫌がっていたが)。

そして太った体…と先輩はよく言うけど、多分いつもダボダボなパーカーを着てて着膨れしてるだけで、本当はそんな太ってないと思う。

痩せてるかは…正直わかんないけど。

「まあ、そりゃ先輩が誰かを好きになってもその目、眉毛、鼻、口、髪、太った体、直さないと両思いにはなれないですね」

結局、僕の口から出た言葉はそれだった。

別にそんなことは思ってないんだけど…

最初先輩と会った時からこんなだったから、今更変わるのもなんか癪で、毒舌のまんまだ。

いや、これが素なのかもしれないけど。

「なにそれっ!?…って、全部ほんとすぎて言い返せない…」

全部嘘なんですから、言い返してくださいよ、先輩。

「あっ、落ち込まないでください。先輩にもいいところなんて…一つ…くらい…」

そんな先輩をからかってやろうと、あざとい声を出してみる。

その声を聞いた途端、先輩は伏せていた顔をパッとあげ、期待に満ちた目で僕を見つめてきた。

まるで捨てられた子犬(…いや、先輩なら、うさぎとかのほうが似合うか?)が拾ってくれそうな飼い主を見つけたかのような、そんな感じだ。

「…ありませんね」

ガクっ、と先輩がくずれおちた。

…やっぱり、小動物っぽいな。