トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

そんな他愛ない会話をしながら歩いていると。

スマホが震えた。

画面には——陽貴くん。

その名前を見た瞬間、自然と顔が緩む。

「すみません、電話だけ」

「どーぞ」

私は電話へ出た。

「もしもし」

『もしもし』

聞こえた瞬間、安心する声。

それだけで疲れが少し軽くなる。

『今帰り?』

「うん、ご飯会終わったとこ」

『そっか』

少しだけ柔らかい声。

『お疲れさま』

「陽貴くんもお疲れさま」

そう返した時だった。

少し後ろを歩いていた森崎さんが、コンビニの前で立ち止まる。

「紗凪ちゃーん、アイスいるー?」

その声が、思った以上にしっかり電話へ入った。

——あ。

そう思った瞬間。

電話の向こうが静かになる。

数秒後。

『……誰』

低い。

びっくりするくらい低い声。

「えっと……同じ指導者さん」

『主任?』

「…うん」

また沈黙。

嫌な予感しかしない。

『……なんで一緒にいるの』

「ご飯会終わって送ってくれてて」

『送ってる?』

声の温度がどんどん下がっていく。

私は思わず苦笑した。

「帰り道同じだからだよ」

『へぇ』

絶対納得してない。

するとまた後ろから。

「チョコミントとバニラどっち派ー?」

「あ、チョコミントで…」

『……』

空気が凍る。

「陽貴くん?」

『その人さ』

「うん?」

『距離近くない?』

「え?」

『“紗凪ちゃん”って何』

真剣すぎる声。

「いや、森崎さん誰にでもあんな感じだよ」

『でも嫌』

即答。

あまりにもストレートで、私は少し目を丸くした。

『しかも送ってるし』

『アイス聞いてるし』

『なんでそんな自然なの』

どんどん不機嫌になる声。

でもその奥に、寂しさが混ざってるのが分かる。

「陽貴くん」

『……なに』

「嫉妬してる?」

『してる』

間髪入れない即答。

思わず笑ってしまう。

『笑わないで』

「ごめん」

『全然ごめんって思ってない』

拗ねた声。

可愛すぎて余計笑いそうになる。

「大丈夫だよ」

『何が』

「ちゃんと陽貴くんが一番だから」

その瞬間。

電話の向こうが静かになる。

でも。

『……足りない』

「え?」

『離れてるのに、そんなこと言われても足りない』

低く甘い声。

胸がぎゅっとなる。

『今すぐ会いたい』

『抱きしめたい』

『他の男と歩いてるとか普通に嫌なんだけど』

嫉妬が隠しきれてない。

私は思わず頬を緩めた。

「もう……」

『だって好きなんだもん』

その言葉が真っ直ぐすぎて、胸が熱くなる。

私は小さくネックレスへ触れた。

「陽貴くん」

『ん』

「ちゃんと繋がってるよ」

『……』

「だから大丈夫」

少しだけ沈黙。