トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

食事会は思っていた以上に楽しかった。

仕事の話だけじゃなく。

フライトでの失敗談。

各地の救急事情。

昔の修羅場の話まで飛び出して、気づけばずっと笑っていた気がする。

指導者側だからこその空気感もあって、不思議と居心地がよかった。

店を出る頃には、もう夜もかなり更けていた。

店を出ると、夜風が少し冷たかった。

「一ノ瀬さんマンションこっちよな?」

森崎さんが聞く。

「はい」

「じゃ送ります」

「え、大丈夫です!」

「いやこんな時間に女の子送らんと帰ったら俺天国のじいちゃんにしばかれますわ〜」

森崎さんの言葉はみんながふふっと笑う。

「じゃあ…お願いします」

大人しく送っていただくとにした。

「じゃあ俺こっちなんで」

「お疲れさまでした」

神波さんたちと別れ、私は森崎さんと並んで歩き始める。

「ほんま今日は疲れましたねぇ」

「ですね」

「でも一ノ瀬さん、すぐ馴染んでましたやん」

「そんなことないですよ」

「て言うか、紗凪ちゃん呼んでもいいです?」

「へ…?」

突然のことで間抜けな声が出た

「これから半年間、共に戦い抜く仲間やしまずは呼び方から仲良よなろう思って」

「まあでも職場では流石に一ノ瀬さんって呼ぶけど」

「オフの時は紗凪ちゃん呼びしたいわあ」

なんてケロッと言うものだから

「全然大丈夫ですよ」

と、そう答えた。

「よっしゃーレベルアップやー」

なんて、嬉しそうな森崎さん。

本当に人との距離の詰め方がプロ級に上手い人。

初対面の時からそうだったけど。

壁を作らせない、気づけば自然と入り込んでくる。

「森崎さんって、誰とでもすぐ仲良くなれますよね」

思わずそう言うと。

「んー、どうやろ」

森崎さんが夜道を歩きながら少し笑う。

「でも救命って、距離間がめっちゃ大事やと思うんよ」

「距離?」

「はい」

コンビニの明かりが横顔を照らす。

さっきまでの軽い空気とは少し違う。

「フライトって特に、“信頼”ないと回らへんから」

その言葉に、私は静かに耳を傾けた。

「狭い機内で」

「命かかってる現場行って」

「その中で、“この人なら大丈夫”って思えるかって結構大事なんよね」

時々、すごく芯のある言葉を言う。

「だからまずは話しやすい空気作る」

「まあ俺の場合、素かもしれんけど」

最後に笑って誤魔化す。

私は少しだけ笑った。

「でも確かに、森崎さんいると空気柔らかくなります」

「お、褒められた」

「本当です」