陽貴side
「ついに今日からかー……」
ぽつりと呟きながら、俺はペットボトルの水を口に含む。
スタジオの休憩スペース。
昼休憩中。
黒騎士のメンバーたちはテーブルを囲んで飯を食っていた。
でも正直、今日はあんまり頭に入ってこない。
今日から紗凪の、本格的なプロジェクトが始まる。
日本初のフライト育成プロジェクト。
全国から集められたトップクラスの救命スタッフ。
その指導者側として、紗凪が立つ。
すごい。
本当にすごいことだ。
分かってる。
でも。
「……はぁ」
無意識にため息が漏れる。
会いてぇ。
普通に。
めちゃくちゃ会いたい。
「陽貴さん最近ガチで元気なくないです?」
向かいで唐揚げ食ってた蒼依が呆れた顔をする。
「分かる」
優朔まで頷いた。
「魂半分大阪行ってるよな」
「行ってる」
即答すると、全員が笑う。
でも実際そんな感じだった。
紗凪が大阪行ってから、家が静かすぎる。
帰っても“おかえり”がない。
ソファに紗凪がいない。
料理の匂いもしない。
慣れって怖い。
たった一ヶ月一緒に暮らしただけなのに、もう全部が当たり前になってた。
「陽貴さん重症っすね〜」
奏がケラケラ笑う。
「うるさい」
「でも紗凪さんめちゃくちゃ愛されてますよね〜」
蒼依まで乗っかる。
俺は適当に「まぁな」と返しながらスマホを見る。
連絡はまだ来てない。
多分今頃セレモニーとかやってる時間だろう。
ちゃんと食べてるかな。
緊張してないかな。
そんなことばっか考えてしまう。
すると突然。
「おっ!!」
奏が大きな声を出した。
全員がびくっとする。
「なんだよ」
「陽貴さん!!」
奏が興奮した顔でスマホを突き出してくる。
「見てください!!」
「紗凪さん!!」
「載ってますって!!」
「は?」
画面を見る。
そこには医療速報サイトの記事。
『日本初
フライト医療統合育成プロジェクト始動』
大きな見出し。
そして、その写真。
壇上。
フライトスーツ姿の紗凪。
一瞬、呼吸が止まりそうになる。
「……うわ」
思わず声が漏れた。
紺色のフライトスーツ。
背筋を伸ばして立つ姿。
真剣な表情。
隣には、全国から集まった指導者たち。
その中に並んでも、全然埋もれてない。
むしろ。
目を引く。
「え、やばくない?」
蒼依が覗き込む。
「めっちゃかっこいい」
「普通に映画のワンシーンみたい」
優朔も静かに頷く。
記事をスクロールする。
そこには紗凪の名前も載っていた。
『東京中央大学病院より招聘された若手フライトナース、一ノ瀬紗凪氏——』
その文字を見た瞬間。
胸が熱くなる。
あぁ。
本当に、遠い場所まで行ったんだなって。
でも同時に。
めちゃくちゃ誇らしかった。
すると奏がさらに騒ぐ。
「見てくださいこれ!」
別の写真。
今度は集合写真だった。
その中でも紗凪は、やっぱりすぐ分かる。
真っ直ぐ前を向いて立っている。
その姿が綺麗すぎて、一瞬見惚れる。
「……かわい」
無意識に零れた。
すると。
「はい出ました」
「重症彼氏」
蒼依が即ツッコむ。
でもそんなのどうでもよかった。
だって。
俺の彼女、ほんとにすごい。
あんな小さい身体で。
命の最前線立って。
全国レベルの場所で戦ってる。
普通に尊敬する。
すると奏が、急にニヤニヤし始めた。
「でも陽貴さん」
「ん?」
「この記事のコメント欄、紗凪さん可愛いってめっちゃ書かれてます」
「は?」
スマホ奪う。
『美人フライトナースすぎる』
『映画化してほしい』
『現場女子かっこいい』
「……」
イラッ。
「顔隠してほしい」
「彼氏出た」
「独占欲やば」
周りが爆笑する。
でも無理だろ。
こんなん。
普通に惚れ直す。
すると優朔が、ふっと笑った。
「でも良かったな」
「紗凪ちゃん、ちゃんと前向いてる顔してる」
その言葉に、俺はもう一回写真を見る。
——確かに。
少し緊張してる。
でも。
ちゃんと覚悟決めた顔してる。
あぁ。
頑張ってるんだな。
そう思った瞬間。
急に会いたくなった。
「……今日電話しよ」
小さく呟く。
すると奏が笑った。
「絶対すると思ってました」
「当たり前だろ」
そう返しながら。
俺はスマホの画面に映る紗凪を、もう一度そっと見つめた。
「ついに今日からかー……」
ぽつりと呟きながら、俺はペットボトルの水を口に含む。
スタジオの休憩スペース。
昼休憩中。
黒騎士のメンバーたちはテーブルを囲んで飯を食っていた。
でも正直、今日はあんまり頭に入ってこない。
今日から紗凪の、本格的なプロジェクトが始まる。
日本初のフライト育成プロジェクト。
全国から集められたトップクラスの救命スタッフ。
その指導者側として、紗凪が立つ。
すごい。
本当にすごいことだ。
分かってる。
でも。
「……はぁ」
無意識にため息が漏れる。
会いてぇ。
普通に。
めちゃくちゃ会いたい。
「陽貴さん最近ガチで元気なくないです?」
向かいで唐揚げ食ってた蒼依が呆れた顔をする。
「分かる」
優朔まで頷いた。
「魂半分大阪行ってるよな」
「行ってる」
即答すると、全員が笑う。
でも実際そんな感じだった。
紗凪が大阪行ってから、家が静かすぎる。
帰っても“おかえり”がない。
ソファに紗凪がいない。
料理の匂いもしない。
慣れって怖い。
たった一ヶ月一緒に暮らしただけなのに、もう全部が当たり前になってた。
「陽貴さん重症っすね〜」
奏がケラケラ笑う。
「うるさい」
「でも紗凪さんめちゃくちゃ愛されてますよね〜」
蒼依まで乗っかる。
俺は適当に「まぁな」と返しながらスマホを見る。
連絡はまだ来てない。
多分今頃セレモニーとかやってる時間だろう。
ちゃんと食べてるかな。
緊張してないかな。
そんなことばっか考えてしまう。
すると突然。
「おっ!!」
奏が大きな声を出した。
全員がびくっとする。
「なんだよ」
「陽貴さん!!」
奏が興奮した顔でスマホを突き出してくる。
「見てください!!」
「紗凪さん!!」
「載ってますって!!」
「は?」
画面を見る。
そこには医療速報サイトの記事。
『日本初
フライト医療統合育成プロジェクト始動』
大きな見出し。
そして、その写真。
壇上。
フライトスーツ姿の紗凪。
一瞬、呼吸が止まりそうになる。
「……うわ」
思わず声が漏れた。
紺色のフライトスーツ。
背筋を伸ばして立つ姿。
真剣な表情。
隣には、全国から集まった指導者たち。
その中に並んでも、全然埋もれてない。
むしろ。
目を引く。
「え、やばくない?」
蒼依が覗き込む。
「めっちゃかっこいい」
「普通に映画のワンシーンみたい」
優朔も静かに頷く。
記事をスクロールする。
そこには紗凪の名前も載っていた。
『東京中央大学病院より招聘された若手フライトナース、一ノ瀬紗凪氏——』
その文字を見た瞬間。
胸が熱くなる。
あぁ。
本当に、遠い場所まで行ったんだなって。
でも同時に。
めちゃくちゃ誇らしかった。
すると奏がさらに騒ぐ。
「見てくださいこれ!」
別の写真。
今度は集合写真だった。
その中でも紗凪は、やっぱりすぐ分かる。
真っ直ぐ前を向いて立っている。
その姿が綺麗すぎて、一瞬見惚れる。
「……かわい」
無意識に零れた。
すると。
「はい出ました」
「重症彼氏」
蒼依が即ツッコむ。
でもそんなのどうでもよかった。
だって。
俺の彼女、ほんとにすごい。
あんな小さい身体で。
命の最前線立って。
全国レベルの場所で戦ってる。
普通に尊敬する。
すると奏が、急にニヤニヤし始めた。
「でも陽貴さん」
「ん?」
「この記事のコメント欄、紗凪さん可愛いってめっちゃ書かれてます」
「は?」
スマホ奪う。
『美人フライトナースすぎる』
『映画化してほしい』
『現場女子かっこいい』
「……」
イラッ。
「顔隠してほしい」
「彼氏出た」
「独占欲やば」
周りが爆笑する。
でも無理だろ。
こんなん。
普通に惚れ直す。
すると優朔が、ふっと笑った。
「でも良かったな」
「紗凪ちゃん、ちゃんと前向いてる顔してる」
その言葉に、俺はもう一回写真を見る。
——確かに。
少し緊張してる。
でも。
ちゃんと覚悟決めた顔してる。
あぁ。
頑張ってるんだな。
そう思った瞬間。
急に会いたくなった。
「……今日電話しよ」
小さく呟く。
すると奏が笑った。
「絶対すると思ってました」
「当たり前だろ」
そう返しながら。
俺はスマホの画面に映る紗凪を、もう一度そっと見つめた。

