トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

更衣室を出て森崎さんに案内されながら、私は救命フロアを歩いていた。

広い廊下。

絶えず鳴るコール音。

行き交うスタッフの足音。

空気が、東京のICUとはまた少し違う。

もっと鋭くて。

もっと熱量がある。

それでも不思議と懐かしさがあった。

「ここが我々の職場、ICUです」

森崎さんがそう言いながら、目の前の大きな扉を開ける。

その瞬間。

一気に現場の空気が流れ込んできた。

モニター音。

人工呼吸器の作動音。

スタッフ同士の声。

忙しく動く看護師たち。

——あぁ、救命だ。

その空気に、自然と背筋が伸びる。

私は森崎さんの後ろについて、中へ足を踏み入れた。

すると。

「あれ、新しい人?」

「え、あの人?」

何人かのスタッフがこちらへ気づく。

その瞬間。

森崎さんがパンッと軽く手を叩いた。

「はーい、みんなちょい集合お願いしまーす!」

通る声。

すると忙しそうにしていたスタッフたちが、次々こちらへ集まってくる。

「なになに?」

「朝から森崎主任テンション高ない?」

「またなんか拾ってきた?」

そんな声まで飛んでいて、思わず少し緊張がほぐれる。

そして。森崎さんが私の隣へ立った。

「皆には前から言うてた通り、今日から半年うちで一緒に働いてもらう一ノ瀬紗凪さんです」

その瞬間。

周りの視線が一気に集まる。

少し緊張していると。

森崎さんがにやっと笑った。

「ちなみにこの人」

「バリバリの救命ナースやで。」

「しかもバリバリのフライトナース」

「東京の中央大学病院から来てもらいました」

その紹介に、周りが一気にざわつく。

「えっ」

「フライト!?」

「しかも中央大学病院!?バリバリの3時次病院」

「やば……」

そんな声が次々聞こえる。

その中には。

「え、めっちゃ綺麗な人来たんやけど」

「顔ちっさ……」

なんて小声まで混ざっていて、私は思わず困ってしまう。

しかも何人か、普通に顔赤い。

……なんで?

すると森崎さんが楽しそうに笑った。

「お前ら反応分かりやすすぎやろ」

その瞬間、周りから笑いが起こる。

空気が一気に柔らかくなった。

「じゃ、一ノ瀬さん一言どうぞ」

急に振られて、私は少し慌てながら前へ出る。

たくさんの視線。

でもその目は、どこか温かかった。

私は小さく深呼吸をする。

「東京の中央大学病院ICUから来ました、一ノ瀬紗凪です。
まだ分からないことも多いと思いますが、少しでも力になれるよう頑張ります。今日から半年間、お世話になります」

「よろしくお願いします」

頭を下げる。

すると次の瞬間。

パチパチパチッ——!!

思っていた以上に大きな拍手が響いた。

「よろしくー!」

「待ってたで!」

「森崎主任がめっちゃ自慢してた人や!」

「一緒に働けるん楽しみです!」

次々飛んでくる声。

みんな笑顔だった。

その空気に、胸の奥が少しだけ軽くなる。

怖かった。

新しい環境。

知らない人たち。

ちゃんとやれるのか不安だった。

でも。

ここはきっと、いい職場だ。

そう思えた。

すると隣で森崎さんが、小さく笑う。

「言うたでしょ?」

「うち、ええ職場なんです」

私はその言葉に、小さく笑い返した。

——うん。

ちゃんと、頑張れそうかもしれない。

そう思えた瞬間だった。