トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

日勤が終わる頃には、外はもう暗くなっていた。

更衣室で着替えながら、私はスマホを見つめる。

——4月から大阪。

正式に決まった。

ちゃんと陽貴くんに伝えなきゃ。

そう思って、私は通話ボタンを押した。

……プルル。

2コール目で、すぐに繋がる。

『もしもし?紗凪?』

電話の向こうは少し騒がしかった。

人の声。

スタッフの動く音。

たぶん撮影かリハの休憩中なんだと思う。

「ごめん、忙しかった?」

『んー?』

少し離れたところへ移動する音がする。

そして。

『よし、大丈夫』

少し静かになった。

『ごめんね、今ちょうど現場いた』

「やっぱり忙しかったよね。かけ直そうか?」

そう言うと。

『いや、休憩中だから大丈夫』

優しい声。

『どうかした?』

その一言だけで、胸が少し安心する。

でも。

直接顔を見て伝えたかった。

「……今日は会いに行ってもいい?」

そう言った瞬間。

少しだけ間が空いた。

……あれ。

急すぎたかな。

忙しいよね。

そう思った次の瞬間。

陽貴くんが小さく笑った。

『そんなこと聞かなくても、いつでもおいでよ』

『合鍵あるでしょ?』

「それはそうなんだけど…」

合鍵は、少し前にもらっていた。

でも陽貴くんがいない家へ先に入るのが、なんとなく申し訳なくて。

結局ほとんど使えていない。

『先に帰ってて』

『今日ちょっと押しそうだけど、なるべく早く帰るから』

その声が優しくて、少しだけ泣きそうになる。

「ありがとう」

『ん?』

「……なんでもない」

小さく笑うと、陽貴くんも優しく笑った気配がした。

『紗凪』

「ん?」

『疲れてる声してる』

一瞬、息が止まる。

やっぱりこの人には隠せない。

『ちゃんと充電してあげるから』

さらっと甘いことを言う。

思わず頬が熱くなった。

「……外なんじゃないの?」

『スタッフに聞かれても別にいいけど?』

「よくないから……!」

慌てて返すと、電話の向こうで楽しそうに笑う声。

『はいはい』

『じゃあまた後でね』

その声があまりにも優しくて。

私は自然と笑っていた。

「……うん」

「また後で」

通話が切れ、病院を後にした。