トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

高城先生と森崎さんを見送ったあと。

私は小さく息を吐いて、ICUへ戻った。

いつものモニター音。

慌ただしく行き交うスタッフ。

さっきまで“未来の話”をしていたはずなのに、戻ってくればすぐ現実だ。

「一ノ瀬」

声をかけられて振り返る。

師長さんだった。

「どうだった?」

その表情はどこか優しい。

私は少しだけ笑って答えた。

「……緊張しました」

「ふふ、でしょうね」

「でも」

一度息を吸う。

「頑張ります」

そう言うと、師長さんがふっと目を細めた。

「うん」

「一ノ瀬なら大丈夫」

その言葉が、胸にじんわり響く。

すると師長さんが手元の書類を確認しながら続けた。

「正式に決まったわ」

「4月から、大阪中央医療センターへ異動」

その瞬間。

改めて現実味が押し寄せる。

4月。

あと1ヶ月。

もう本当にすぐだ。

「期間は半年」

「向こうでは病院勤務と並行して、フライトナース育成支援チームへ参加してもらう形になるから」

「かなり忙しくなると思う」

「……はい」

分かってる。

きっと今まで以上に大変になる。

でも。

不思議と怖さだけじゃなかった。

「向こうの師長さんも、高城先生も、森崎主任も」

「かなり期待してたわよ」

森崎主任。

その呼び方に、少しだけ新鮮な気持ちになる。

「“ぜひ一ノ瀬さんに来てほしい”って」

そう言われて、胸が少し熱くなった。

師長さんがそんな私を見ながら、小さく笑う。

「寂しくなるわねぇ」

「……私もです」

ここで積み上げてきた時間。

支えてくれた人たち。

全部、大切だった。

すると師長さんがぽんっと肩を叩く。

「でも、一ノ瀬ならもっと上に行ける」

「半年、しっかり吸収して、
そしてあんたの看護を教えておいで」

その言葉に、私は真っ直ぐ頷いた。

「……はい」

大阪。

新しい環境。

新しい挑戦。

不安もある。

でも。

今は少しだけ。

その未来が楽しみになっていた。