トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

気づけばかなり時間が経っていた。

「すみません、長々と」

私がそう言うと。

森崎さんがすぐに笑う。

「いやいや、こっちが勝手に喋りすぎただけなんで」

「まぁでも」

タブレットを片付けながら、ふっと目を細めた。

「一ノ瀬さん来てくれるん、ほんまに楽しみにしてます」

その言葉に、胸が少し熱くなる。

カンファレンスルームを出ると、高城先生が廊下で待っていた。

「お疲れさまでした」

穏やかに笑う先生。

「今日は急なお時間ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ……」

すると高城先生が優しい目でこちらを見る。

「不安もあると思います」

「でも、一ノ瀬さんなら大丈夫です」

真っ直ぐ言われて、少しだけ背筋が伸びる。

その隣で、森崎さんも軽く笑った。

「困ったらちゃんと頼ってくださいね」

「一人で抱え込まれたら、教育する側めっちゃ困るんで」

「……はい」

「あと大阪来たら、まず関西弁慣れてもらわなあかんなぁ」

「え?」

「多分そのうち普通に“なんでやねん”って言うようになりますよ」

楽しそうに笑う森崎さん。

「森崎。お前は本当に…すみません」

高城先生がそう言って謝る。

その空気感に、自然と緊張が解けていく。

そして。エレベーターへ向かう前。

高城先生が改めてこちらを見た。

「——1ヶ月後、お待ちしています」

その言葉に。

胸が、少しだけ高鳴った。

1ヶ月後。

私は大阪へ行く。

新しい環境へ。

新しい仲間の元へ。

不安がゼロになったわけじゃない。

でも。

“頑張りたい”って気持ちは、確かに大きくなっていた。

エレベーターの扉が閉まる直前。

森崎さんがひらっと手を振る。

「ほな、一ノ瀬さん」

「次は大阪で」

扉が閉まる。

静かになった廊下で、私は小さく息を吐いた。

——本当に、始まるんだ。

新しい日々が。