一通りオリエンテーションが終わる頃には最初に感じていた緊張とは別の意味で、私は圧倒されていた。
運営体制。
教育プログラム。
フライトシミュレーション。
災害訓練。
全国の救命センターとの連携。
どれを聞いても規模が大きい。
——日本初。
その言葉の重みを、改めて実感する。
こんなプロジェクトに参加できるなんて。
看護師として、本当に光栄なことだ。
資料を見つめながら小さく息を吐くと。
森崎さんがこっちを見た。
「……ちょっと実感湧いてきました?」
「はい……」
正直、まだ半分夢みたいだけど。
でも。確実に、自分の人生が大きく動こうとしている。
すると森崎さんがタブレットを切り替えた。
「で、一ノ瀬さんに主にお願いしたいんですけど」
画面に映し出されたのは、“若手フライトナース育成プログラム”。
「俺と一緒に、若手フライトナース教育入ってもらいます」
「教育……?」
「はい」
森崎さんが頷く。
「若手ナースと一緒にヘリ乗って、実際の現場出て。
判断の仕方とか、動き方とか、リアルタイムで教えていく感じですわ。」
その言葉に、自然と表情が引き締まる。
つまりただ講義するだけじゃない。
本当に現場で、“命の最前線”を教えるんだ。
「もちろん、楽な仕事ちゃいます」
森崎さんの声が少しだけ低くなる。
「現場って毎回ちゃうし」
「教科書通りにいかへんことの方が多い」
「せやから俺らは、“現場でどう考えるか”を教えたいんです」
その目は真っ直ぐだった。
きっとこの人は。
本気で、日本の救命を変えようとしてる。
「一ノ瀬さんの“現場対応力”はかなり期待されてます」
「特に」
森崎さんが少し笑う。
「修羅場で冷静なん、めちゃくちゃ強い武器なんで」
そんな風に言われると、少し照れくさい。
でも同時に嬉しかった。
自分が積み上げてきたものを、ちゃんと見てくれている人がいる。
「……ちゃんと務まりますかね」
思わず本音が漏れる。
すると森崎さんが一瞬きょとんとしたあと、吹き出した。
「いや逆になんでそんな不安なんです?」
「え?」
「高城先生がわざわざ東京まで来た意味、分かってます?」
「……」
「“この人じゃなあかん”って思われたから呼ばれてるんですよ」
その言葉に、胸が少し熱くなる。
森崎さんはふっと笑って続けた。
「まぁプレッシャー感じるんは当然ですけど
一人で全部抱え込まんといてくださいね」
「教育ってチーム戦なんで」
その言葉の一つ一つにちゃんと芯がある。
「……はい」
私が頷くと。
森崎さんが満足そうに笑った。
そして
「困った時はちゃんと俺に相談してな。」
「抱え込むタイプやろ、一ノ瀬さん」
「え」
なんで分かったんだろう。
そう思っていると森崎さんが笑う。
「分かりやすすぎます」
そう言いながら。
ぽんっ、と軽く頭を撫でられた。
「大丈夫やで。ちゃんと支えますから」
あまりにも自然な動作で、一瞬固まる。
「……っ」
すると森崎さんが「あ、すんません」と笑った。
「妹にもようやる癖で」
悪びれた様子もなく笑うその姿に、思わず苦笑してしまう。
でも。不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、少しだけ肩の力が抜けた気がする。
この人。
距離の詰め方が上手い。
人を安心させるのも上手い。
軽そうに見えるのに、ちゃんと周りを見てる。
だからきっと。
たくさんの人に信頼されてるんだろう。
——あぁ。
この人、天然人たらしだ。
そう思いながら。
私は少しだけ困ったように笑った。
「よし」
「ほな半年、一緒に日本一のフライト教育チーム作りましょか」
その言葉に。
胸が高鳴る。
不安もある。
寂しさもある。
でも。
それ以上に。
“頑張りたい”って気持ちが、少しずつ大きくなっていた。
運営体制。
教育プログラム。
フライトシミュレーション。
災害訓練。
全国の救命センターとの連携。
どれを聞いても規模が大きい。
——日本初。
その言葉の重みを、改めて実感する。
こんなプロジェクトに参加できるなんて。
看護師として、本当に光栄なことだ。
資料を見つめながら小さく息を吐くと。
森崎さんがこっちを見た。
「……ちょっと実感湧いてきました?」
「はい……」
正直、まだ半分夢みたいだけど。
でも。確実に、自分の人生が大きく動こうとしている。
すると森崎さんがタブレットを切り替えた。
「で、一ノ瀬さんに主にお願いしたいんですけど」
画面に映し出されたのは、“若手フライトナース育成プログラム”。
「俺と一緒に、若手フライトナース教育入ってもらいます」
「教育……?」
「はい」
森崎さんが頷く。
「若手ナースと一緒にヘリ乗って、実際の現場出て。
判断の仕方とか、動き方とか、リアルタイムで教えていく感じですわ。」
その言葉に、自然と表情が引き締まる。
つまりただ講義するだけじゃない。
本当に現場で、“命の最前線”を教えるんだ。
「もちろん、楽な仕事ちゃいます」
森崎さんの声が少しだけ低くなる。
「現場って毎回ちゃうし」
「教科書通りにいかへんことの方が多い」
「せやから俺らは、“現場でどう考えるか”を教えたいんです」
その目は真っ直ぐだった。
きっとこの人は。
本気で、日本の救命を変えようとしてる。
「一ノ瀬さんの“現場対応力”はかなり期待されてます」
「特に」
森崎さんが少し笑う。
「修羅場で冷静なん、めちゃくちゃ強い武器なんで」
そんな風に言われると、少し照れくさい。
でも同時に嬉しかった。
自分が積み上げてきたものを、ちゃんと見てくれている人がいる。
「……ちゃんと務まりますかね」
思わず本音が漏れる。
すると森崎さんが一瞬きょとんとしたあと、吹き出した。
「いや逆になんでそんな不安なんです?」
「え?」
「高城先生がわざわざ東京まで来た意味、分かってます?」
「……」
「“この人じゃなあかん”って思われたから呼ばれてるんですよ」
その言葉に、胸が少し熱くなる。
森崎さんはふっと笑って続けた。
「まぁプレッシャー感じるんは当然ですけど
一人で全部抱え込まんといてくださいね」
「教育ってチーム戦なんで」
その言葉の一つ一つにちゃんと芯がある。
「……はい」
私が頷くと。
森崎さんが満足そうに笑った。
そして
「困った時はちゃんと俺に相談してな。」
「抱え込むタイプやろ、一ノ瀬さん」
「え」
なんで分かったんだろう。
そう思っていると森崎さんが笑う。
「分かりやすすぎます」
そう言いながら。
ぽんっ、と軽く頭を撫でられた。
「大丈夫やで。ちゃんと支えますから」
あまりにも自然な動作で、一瞬固まる。
「……っ」
すると森崎さんが「あ、すんません」と笑った。
「妹にもようやる癖で」
悪びれた様子もなく笑うその姿に、思わず苦笑してしまう。
でも。不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、少しだけ肩の力が抜けた気がする。
この人。
距離の詰め方が上手い。
人を安心させるのも上手い。
軽そうに見えるのに、ちゃんと周りを見てる。
だからきっと。
たくさんの人に信頼されてるんだろう。
——あぁ。
この人、天然人たらしだ。
そう思いながら。
私は少しだけ困ったように笑った。
「よし」
「ほな半年、一緒に日本一のフライト教育チーム作りましょか」
その言葉に。
胸が高鳴る。
不安もある。
寂しさもある。
でも。
それ以上に。
“頑張りたい”って気持ちが、少しずつ大きくなっていた。

