トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

その瞬間。

森崎さんがぷっと吹き出した。

「ははっ、やば」

「その反応ほんま可愛すぎるやろ」

「え、いや……」

急に笑われて余計に困る。

すると森崎さんが肩を揺らしながら笑った。

「いや、なんか安心しましたわ」

「……安心?」

「はい」

そう言って、頬杖をつきながらこっちを見る。

「もっとこう、“完璧スーパー看護師”みたいな人想像してたんですよ」

「冷静沈着で隙なくて、近寄りがたい感じの」

「でも」

ふっと目を細める。

「聞いてた通り、ほんま天然さんなんやなぁって」

「……天然じゃないです」

反射的に返す。

すると森崎さんが即答した。

「いや、天然です」

「違います」

「だって今、“褒められて困ってます”って顔めちゃくちゃ出てる」

図星すぎて言葉に詰まる。

森崎さんがまた楽しそうに笑った。

「素直やなぁ」

「いじらないでください……」

「無理ですねぇ」

さらっと返された。

「一ノ瀬さん、いじりがいありすぎやもん」

なんで初対面でこんなペース乱されてるんだろう。

でも不思議と嫌な感じはしなかった。

距離感の詰め方が上手いというか。

自然と空気を柔らかくする人なんだろう。

すると森崎さんがふっと真面目な顔になる。

「でも安心しました」

「え?」

「現場でどんだけ優秀でも、近寄りづらい人やったらチームまとまらへんので」

その声は穏やかだった。

「教育って技術だけちゃうんですよ」

「周りが“この人についていきたい”って思えるかも、めっちゃ大事やから」

その言葉に、少しだけハッとする。

森崎さんは軽そうに見える。

でも。

ちゃんと人を見てる。

空気も。

チームも。

だから主任を任されてるんだ。

「まぁ、一ノ瀬さんなら大丈夫そうやけど」

森崎さんがにっと笑う。

「多分、うちの若手ら秒で懐きます」

「えぇ……」

「絶対“紗凪さん〜!”って囲まれてますわ」

「そうだと…いいんですけど…」

「そこは安心して絶対大丈夫ですわ」

即答だった。

「しかも本人無自覚タイプやし」と付け加える

「…?」

森崎さんがまた笑う。

「その感じ、そのままでいてくださいね」

「大阪来ても」

その声が少しだけ優しくなる。

「変に気ぃ張りすぎんでええから」

その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなった。

すると森崎さんが再びタブレットへ視線を落とす。

「……あ、ちなみに」

「大阪来たら覚悟してくださいね」

「え?」

「うちの救命、ほんま忙しいんで」

「今の2〜3倍は走ります」

「3倍……?」

「フライト件数もえぐいし、災害案件飛ぶことも普通にあります」

さらっと言う内容じゃない。

でも。

森崎さんはどこか楽しそうだった。

「けど」

ふっと笑う。

「その分、めちゃくちゃ成長できます」

その目は真っ直ぐだった。

冗談っぽく笑っているのに。

現場への熱量だけは、一切ブレていない。

私は小さく息を吐いて、資料を見つめた。

不安はまだある。

でも。

少しだけ。

“この人たちと働いてみたい”って思い始めている自分がいた。