トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

——“一番しんどかったの、梓ちゃんだと思う”

その言葉が、ずっと頭の中で響いていた。

私は何か返そうとした。

でも。

上手く声が出ない。

胸の奥が、じわじわ熱くなっていく。

優朔さんは、急かさず静かに待っていた。

その優しさが、逆に駄目だった。

気づけば。

ぽろっと涙が落ちる。

「あ……」

自分でも驚いた。

泣くつもりなんてなかったのに。

でも、一回溢れたらもう止まらなかった。

視界が滲む。

私は慌てて顔を逸らす。

「……ご、ごめんなさい」

「なんで謝るの」

優朔さんの声は、すごく穏やかだった。

私は唇を噛む。

ずっと。

ずっと気を張ってた。

紗凪が死ぬかもしれないって言われた日から。

私がちゃんとしなきゃって。

私まで崩れたら駄目だって。

ご両親の代わりに。

親友として。

全部、ちゃんとしなきゃって。

だから。

怖いとか。

しんどいとか。

考えないようにしてた。

でも今。

“頑張ったね”って言われて。

“しんどかったね”って言われて。

初めて。

あぁ、私限界だったんだって気づいてしまった。

涙が止まらない。

「……っ、わたし……」

声が震える。

「ほんと、怖くて……」

掠れた声が漏れる。

「あの日……ほんとに、紗凪……死ぬかもって……」

そこまで言った瞬間。

涙が一気に溢れた。

私は顔を覆う。

そんな私を見て。

優朔さんが、ゆっくり立ち上がった。

そして。

ふわっと、優しく抱きしめてくれる。

「……っ」

驚いて息が止まりそうになる。

でも。

拒絶するより先に、安心が来た。

優朔さんの身体から、ふわりとシトラスの香りがする。

爽やかで。

でもどこか落ち着く匂い。

背中をゆっくり撫でられる。

「もう大丈夫」

低くて優しい声。

その声が、張り詰めてたものを全部壊していく。

私は子供みたいに泣いてしまった。

優朔さんは何も言わない。

ただ静かに抱きしめてくれていた。

「……ほんと、よく頑張った」

耳元で落ちる声。

その瞬間。

“誰かに頼ってよかったんだ”

って、初めて思えた。

私は震える手で、優朔さんの服を少し掴む。

すると優朔さんが、また優しく背中を撫でる。

「今くらい、甘えていいから」

その言葉に。

私はまた、涙を零した。