トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

ご飯を食べ終わったあと。

せっかくだから、と少しだけみんなで街を歩いた。

「これ大阪限定?」

「うわ、この服かわい」

「蒼依それ絶対似合わないって」

「なんで!?」

そんなくだらない会話をしながら。

普通の大学生みたいに笑って歩く黒騎士は、なんだか新鮮だった。

途中。

奏くんがサングラス越しにショーウィンドウ見ながら、

「……変装してると逆にテンション上がるな」

とか言い出して。

蒼依くんに、

「職質されそう」

って言われていた。

2人のやり取りが面白すぎて、私はずっと笑ってた気がする。

優朔さんはあいかわらず穏やかに笑っていた。

でも。

時々ふと、皆がスマホを見る。

陽貴さんからの連絡を待ってるんだと思う。

みんな、紗凪のこと心配してくれてるんだろうな。

そう思うと、少しだけ胸が温かくなった。

そして私たちはホテルへ向かった。

都内の高級ホテルほどじゃないけど、かなり綺麗なホテル。

チェックインを済ませる。

もちろん部屋は別々。

みんな同じ階で、それぞれ一部屋ずつ取っていた。

「じゃ、おやすみなさーい」

蒼依くんが手をひらひら振る。

「おやすみ」

「明日朝早いから寝ろよ」

「奏くんもね」

そんな会話を交わしながら、それぞれ自分の部屋へ向かっていく。

私もカードキーをかざして部屋へ入った。

ガチャ。

静かな空間。

急に、一人になった感じがした。

私は小さく息を吐く。

ベッドへ荷物を置いて、そのまま腰掛けた。

今日一日。

本当に濃かった。

紗凪に会って。

陽貴さんの顔見て。

みんなでご飯食べて。

笑って。

安心して。

ようやく少しだけ、“日常”へ戻れた気がする。

私はぼんやりスマホを手に取った。

そこには、紗凪とのトーク画面。

少し迷ってから、メッセージを打つ。

『ちゃんと寝なさいよ』

数秒後。

すぐ既読がついた。

『梓もね』

そして送られてくる1枚の写真

紗凪と陽貴さんが幸せそうに笑ってる写真。

2人とも、本当に幸せそうで。

思わず、ふっと笑ってしまう。

親友を支えてくれる人がいて本当に良かったと心から思う。

陽貴さんがいなかったら紗凪は今頃折れていたかもしれない。

私はベッドへ倒れ込む。

天井を見上げながら、小さく呟いた。

「……でもほんと、生きててくれてよかった」

静かな部屋の中。

その言葉だけが、ぽつんと溶けていった。