トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

梓side

「うまーっ!!」

ものすごい勢いで声を上げたのは、蒼依くんだった。

目の前のお好み焼きを頬張りながら、完全に目を輝かせている。

「なにこれやば!」

「大阪ってこんなにレベル高いの!?」

その反応に、思わず私は吹き出した。

今、私たちは——

陽貴さんを除く黒騎士3人と私で、大阪の有名なお好み焼き屋さんへ来ていた。

時間帯が良かったのか、店内はかなり賑わっている。

……なのに。

誰も、黒騎士だと気づいていない。

いや、ほんと何で?

改めて見ると、みんなの変装技術がプロすぎた。

優朔さんは黒縁メガネにキャップ。

いつものオーラを消すようにラフな格好してるし。

蒼依くんはパーカー深く被って、犬みたいにはしゃいでるからただの大学生にしか見えない。

そして。

一番面白いのが奏くん。

「いやマジでそのカツラ慣れないんだけど」

思わず私が笑うと。

奏くんが「仕方ないでしょ!」と小声で返す。

今日は金髪っぽい短髪のウィッグ。

普段の派手な緑髪を完全封印してるせいで、誰!?状態だった。

でも意外と似合ってるのが悔しい。

蒼依くんなんか、さっきから奏くん見るたび笑ってる。

「ははっ、ほんと誰だよ」

「お前あとで覚えとけよ」

「いやでもマジでホスト感ある」

「やめろ」

そんなやり取りに、私は声を押し殺して笑う。

優朔さんも苦笑しながらウーロン茶を飲んでいた。

「久々だね、こんな普通に飯食うの」

その言葉に、みんな少しだけ静かになる。

多分ずっと気を張ってたんだと思う。

紗凪が倒れてから。

陽貴さんも。

黒騎士のみんなも。

ずっと。

蒼依くんが、ふと真面目な顔で呟く。

「でもほんとよかったですよね」

「紗凪さん元気になってきて」

その声に、私は小さく頷く。

「ほんとに」

優朔さんも静かに息を吐いた。

「最初聞いた時、本気で終わったと思った」

「陽貴さんが特にやばかったし」

「あー……」

奏くんが苦笑する。

「あんな陽貴さん初めて見たっす」

「だいぶ痩せたし」

私はその時の陽貴さんを思い出す。

ICUで。

紗凪の手を握ったまま、壊れそうな顔してた人。

あんな陽貴さん、多分誰も見たことなかった。

すると蒼依くんが、もぐもぐしながら笑った。

「でも今日の陽貴さん、めっちゃ嬉しそうだったすね」

「うん」

私は自然と笑ってしまう。

病室で紗凪見た瞬間。

あの人、完全に顔変わった。

ずっと張ってた糸が切れたみたいに。

優朔さんがふっと目を細める。

「……ほんと好きなんだろうな」

その言葉に、みんな静かに頷いた。

その時。

ジュゥゥゥッ——

鉄板の上でソースが弾ける音。

大阪の夜は賑やかで。

でも、どこかあったかかった。