トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-

気づけば。

窓の外は、すっかり夜になっていた。

昼間あんなに笑って。

たくさん話して。

久しぶりに一緒にご飯まで食べて。

それだけなのに。

こんなにも一日が早く感じたのは、初めてだった。

私はベッドへ横になりながら、ぼんやり天井を見る。

明日の朝には。

陽貴くんは、また東京へ戻ってしまう。

そう思った瞬間。

胸の奥が、きゅっと苦しくなった。

……こないだまでは。

ただ、会いたかった。

一目見れたらそれだけでいいって思ってた。

姿を見れたら。声が聞けたら。

それだけで十分だって。

なのに実際会ってしまったら、全然足りない。

もっと一緒にいたい。

もっと触れてほしい。

もっと話したい。

離れたくない。

そんな欲ばっかり、どんどん増えていく。

「……紗凪?」

陽貴くんの声で、我に返る。

いつの間にか、ぼーっとしてたみたいだった。

「しんどい?」

私は小さく首を横に振る。

「……ちがう」

「ただ、寂しいなって」

その瞬間陽貴くんの表情が、少しだけ揺れた。

でもすぐ、優しく笑う。

「俺も」

静かな声。

陽貴くんは、ベッドの柵を上げてから毛布を整えてくれる。

まるで壊れ物扱うみたいに、すごく丁寧に。

「はい、おやすみの準備完了」

「……なにそれ」

思わず笑うと。

陽貴くんも少し笑った。

それから。

ベッド横の椅子へ腰掛ける。

そして、私の髪へ触れた。

優しく撫でる指先。

その感触が心地よくて、少しだけ目を細める。

「……寝ないの?」

私が聞くと。

陽貴くんは髪を撫でたまま、小さく笑った。

「紗凪が寝てから寝るよ」

「子供みたい」

「でも見てたいから」

その言葉が、あまりにも自然で。

私は胸が熱くなる。

病室の灯りは少し落とされていて。

静かな空間の中。

陽貴くんの手だけが、ずっと優しく動いていた。

私はその温もりに安心しながら、小さく呟く。

「……陽貴くん」

「ん?」

「来てくれて、ありがとう」

すると陽貴くんが、一瞬だけ撫でる手を止めた。

それから。

泣きそうなくらい優しい顔で笑う。

「当たり前だよ」

その一言だけで。

胸がいっぱいになる。

私は少しだけ身体を丸めた。

すると陽貴くんが、そっと私の指先を握る。

「ちゃんと寝て」

「明日、またリハビリあるんでしょ」

「……うん」

「頑張りすぎないこと」

「陽貴くんも」

「俺は頑張る仕事だからね」

「ずるい」

小さく笑い合う。

その時間が、幸せだった。

私はゆっくり目を閉じる。

髪を撫でる感触。

指先の温度。

安心する匂い。

全部が愛おしい。

眠りに落ちる直前。

陽貴くんが、本当に小さな声で呟いた。

「……大好き」

夢みたいに優しい声だった。

そんな大好きな人の声を聞きながら私はゆっくりと眠りについた。