トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

——オペ室。

無影灯の光が、鋭く術野を照らしていた。

「吸引!」

「ガーゼ追加!」

「血圧!?」

声が飛び交う。

モニターアラームが絶え間なく鳴り続けていた。

術野には、赤。

次々溢れてくる血液。

助手の医師が必死に吸引を合わせる。

「SpO₂下がってます!」

「88……85!」

麻酔科医がモニターを睨みながら声を張る。

「換気入らない、肺挫傷強い!」

「PEEP上げます!」

緊迫した空気。

誰一人、無駄な動きをしない。

でも。

その空気には、確かな焦りが混ざっていた。

執刀している胸部外科医の額から汗が落ちる。

「くそっ……出血止まらない!」

声が荒くなる。

「左胸腔内まだ溜まってる!」

「吸引追いつけ!」

助手が即座に動く。

大量出血。

肺損傷。

肋骨骨折。

そして低下し続ける酸素化。

全部が、一気に押し寄せていた。

術台の上にいるのは。

いつも一緒に現場へ立っていた、仲間。

それが余計に空気を重くする。

「輸血追加!」

「MAPまだ低い!」

「ノルアド上げます!」

麻酔科医が次々指示を飛ばす。

その横で、器械出し看護師も必死に器具を渡していた。

空気は完全に殺伐としていた。

ピリついている。

誰も余裕なんてない。

その時だった。

ピーーーッ——

モニター音が変わる。

「っ、血圧さらに低下!」

「70切ります!」

一瞬、空気が凍る。

胸部外科医が舌打ちした。

「……まだ落ちるのかよ」

その声に、焦りが滲む。

「肺だけじゃない、どっかまだ出てる!」

「腹部確認!」

「エコー!」

術野の空気がさらに慌ただしくなる。

スタッフが走る。

器械音。

アラーム。

怒号。

全部が混ざる。

その中心で。

紗凪は、静かに横たわっていた。

血に染まったフライトスーツは、もう切り開かれている。

人工呼吸器が規則的に換気を送り込む。

でも。

モニターの数字は、全く安定しない。

胸部外科医が強く息を吐く。

「……絶対落とすなよ」

誰に向けた言葉か分からなかった。

自分自身か。

チームか。

それとも。

必死に生きようとしている紗凪へか。

「この子、まだ若いんだぞ……!」

その声が、オペ室へ重く響いた。