陽貴side
全国ツアー、名古屋公演当日。
会場入りした瞬間から、空気がいつもと違った。
アリーナ周辺には朝から人が溢れていて。
グッズ列は長蛇。
黒騎士のタオルを肩にかけたファンたちが写真を撮っている。
スタッフも常に走ってる状態。
「佐野さん次雑誌コメント録りお願いしまーす!」
「はい」
返事しながら移動。
コメント撮り、リハ、衣装確認、打ち合わせ。
息つく暇もない。
全国ツアー中なんて、毎日こんな感じだ。
ホテル戻って寝れるの、ほぼ深夜。
起きたらまた移動。
でも、ステージへ立つ瞬間だけは全部吹き飛ぶ。
楽屋へ戻ると、奏がソファに転がっていた。
「汗とまんね……」
「まだ本番前だけど」
「いやだって今日名古屋熱量やばいですもん」
蒼依もペットボトル片手に頷く。
「外の歓声聞こえた?」
「今日マジすごいっすよ」
優朔がスマホ見ながらふっと笑った。
「SNSも朝から黒騎士だらけだな」
トレンド入り、関連記事、動画。
毎日何かしら話題になる。
それがもう当たり前になってた。
昔は、こんな未来想像もしてなかったのに。
「陽貴さん」
奏がニヤッと笑う。
「紗凪さんからLINEきてました?」
「なんで分かるんだよ」
「顔」
そんな分かりやすいか、俺。
いや、奏が鋭すぎるんだよな。
スマホを見る。紗凪から来ていた短いLINE。
『ライブ頑張ってね!』
その一文だけで、不思議なくらい気持ちが落ち着く。
最近は、お互い忙しい。
電話も短い。
それでも紗凪が頑張ってると思うと、俺も頑張れる。
蒼依が手を叩く。
「そろそろ国民的アイドル戻ってきてくださーい」
「誰が国民的アイドルだ」
「お前だよ」
優朔の冷静なツッコミに、楽屋が少し笑いに包まれる。
そして、本番直前。
暗転したステージ裏。
聞こえてくる歓声。
地鳴りみたいだった。
『きゃぁぁぁぁ!!』
『陽貴ーー!!』
『黒騎士ーー!!』
イヤモニ越しでも分かる熱量。
スタッフのカウント。
「5秒前!」
空気が変わる。
俺たちは顔を見合わせる。
そして。
ステージへ飛び出した瞬間。
歓声が爆発した。
眩しいライト、揺れるペンライト、埋め尽くされた客席。
何万人って人間が、一斉に俺たちを見てる。
イントロ開始。
身体が自然に動く。
歌う、踊る、煽る。
歓声が返ってくる。
その瞬間だけは、疲れなんか全部忘れる。
曲が進みセンターステージへ移動。
いつもの癖で客席を見る。
ファンサしながら。
その時。
「あれ」
見覚えのある顔が目に入った。
——梓ちゃん。
紗凪の親友。
名古屋来てたんだ。
そう思った瞬間、俺は思わず笑いそうになった。
だって、手に持ってるペンライトから服装まで青一色だから。
青は優朔のメンカラ。
しかもびっくりするくらい優朔しか見てない。
俺たちが近く通っても反応薄いのに。
優朔が前来た瞬間、一気に目追ってる。
分かりやす。
その時ちょうど優朔が近くを通る。
笑顔でファンサ。軽く手を振る。
そして、梓ちゃんを見た。
他のファン達とは明らかに違う甘くて優しい笑顔。
その瞬間梓ちゃんが完全に固まった。
ペンライト振るの止まってる。
……なるほど。
こっちも順調ってことね。
そんなこと思いながら、俺は再びセンター位置へ戻る。
歓声。熱気。レーザー。
これが俺たちの日常。
寝る時間削って、移動して、撮影して。
歌って、ステージ立って。
また次の日も走り続ける。
華やかに見える世界。
でも、その裏はかなり泥臭い。
それでも、この景色を見た瞬間、全部報われる。
そしてふと、大阪が頭をよぎる。
紗凪も今頃頑張ってんだろうな。
そう思った瞬間。
自然と笑みが浮かんだ。
負けてられねぇ。
俺も。
ちゃんと前走らないと。
「名古屋ーーー!!!」
俺が叫ぶ。
その瞬間、会場が割れそうなくらいの歓声で応えた。
全国ツアー、名古屋公演当日。
会場入りした瞬間から、空気がいつもと違った。
アリーナ周辺には朝から人が溢れていて。
グッズ列は長蛇。
黒騎士のタオルを肩にかけたファンたちが写真を撮っている。
スタッフも常に走ってる状態。
「佐野さん次雑誌コメント録りお願いしまーす!」
「はい」
返事しながら移動。
コメント撮り、リハ、衣装確認、打ち合わせ。
息つく暇もない。
全国ツアー中なんて、毎日こんな感じだ。
ホテル戻って寝れるの、ほぼ深夜。
起きたらまた移動。
でも、ステージへ立つ瞬間だけは全部吹き飛ぶ。
楽屋へ戻ると、奏がソファに転がっていた。
「汗とまんね……」
「まだ本番前だけど」
「いやだって今日名古屋熱量やばいですもん」
蒼依もペットボトル片手に頷く。
「外の歓声聞こえた?」
「今日マジすごいっすよ」
優朔がスマホ見ながらふっと笑った。
「SNSも朝から黒騎士だらけだな」
トレンド入り、関連記事、動画。
毎日何かしら話題になる。
それがもう当たり前になってた。
昔は、こんな未来想像もしてなかったのに。
「陽貴さん」
奏がニヤッと笑う。
「紗凪さんからLINEきてました?」
「なんで分かるんだよ」
「顔」
そんな分かりやすいか、俺。
いや、奏が鋭すぎるんだよな。
スマホを見る。紗凪から来ていた短いLINE。
『ライブ頑張ってね!』
その一文だけで、不思議なくらい気持ちが落ち着く。
最近は、お互い忙しい。
電話も短い。
それでも紗凪が頑張ってると思うと、俺も頑張れる。
蒼依が手を叩く。
「そろそろ国民的アイドル戻ってきてくださーい」
「誰が国民的アイドルだ」
「お前だよ」
優朔の冷静なツッコミに、楽屋が少し笑いに包まれる。
そして、本番直前。
暗転したステージ裏。
聞こえてくる歓声。
地鳴りみたいだった。
『きゃぁぁぁぁ!!』
『陽貴ーー!!』
『黒騎士ーー!!』
イヤモニ越しでも分かる熱量。
スタッフのカウント。
「5秒前!」
空気が変わる。
俺たちは顔を見合わせる。
そして。
ステージへ飛び出した瞬間。
歓声が爆発した。
眩しいライト、揺れるペンライト、埋め尽くされた客席。
何万人って人間が、一斉に俺たちを見てる。
イントロ開始。
身体が自然に動く。
歌う、踊る、煽る。
歓声が返ってくる。
その瞬間だけは、疲れなんか全部忘れる。
曲が進みセンターステージへ移動。
いつもの癖で客席を見る。
ファンサしながら。
その時。
「あれ」
見覚えのある顔が目に入った。
——梓ちゃん。
紗凪の親友。
名古屋来てたんだ。
そう思った瞬間、俺は思わず笑いそうになった。
だって、手に持ってるペンライトから服装まで青一色だから。
青は優朔のメンカラ。
しかもびっくりするくらい優朔しか見てない。
俺たちが近く通っても反応薄いのに。
優朔が前来た瞬間、一気に目追ってる。
分かりやす。
その時ちょうど優朔が近くを通る。
笑顔でファンサ。軽く手を振る。
そして、梓ちゃんを見た。
他のファン達とは明らかに違う甘くて優しい笑顔。
その瞬間梓ちゃんが完全に固まった。
ペンライト振るの止まってる。
……なるほど。
こっちも順調ってことね。
そんなこと思いながら、俺は再びセンター位置へ戻る。
歓声。熱気。レーザー。
これが俺たちの日常。
寝る時間削って、移動して、撮影して。
歌って、ステージ立って。
また次の日も走り続ける。
華やかに見える世界。
でも、その裏はかなり泥臭い。
それでも、この景色を見た瞬間、全部報われる。
そしてふと、大阪が頭をよぎる。
紗凪も今頃頑張ってんだろうな。
そう思った瞬間。
自然と笑みが浮かんだ。
負けてられねぇ。
俺も。
ちゃんと前走らないと。
「名古屋ーーー!!!」
俺が叫ぶ。
その瞬間、会場が割れそうなくらいの歓声で応えた。

