クラゲの少女

家のドアの前で立ち止まった。そしてドアを開ける。

リビングの方から怒鳴り声が聞こえた。

また始まっていたのだ。

私は自室にカバンを置いて、洗面所で手を洗ってから自室に戻った。

______【なこってさ、クラゲみたいだよな】

道野くんに言われたその言葉が蘇った。

クラゲ……。私が……?

その言葉が頭から離れなかった。

ガチャ。

ドアの方を見た。

「帰ってるならおかえりくらいいえば?なこは口がないのかしら。まぁいーやご飯できてるから来るならかってきになさい」

冷たい声でお母さんがそう言った。

お母さんの姿は髪の毛はボサボサで泣いたであろうあとだった。

私は立ち上がってリビングに行く。

お父さんと目が合いお父さんは舌打ちした。

「お前な、帰ってるならおかえりくらい言えるだろ。そんなんも言えないのか!」

私は黙った。

お父さんが急に立ち上がって私の前にたった。

「お前今反抗期なのか?……なぁ!聞いてんのか?!」

パンッ!と頬に強い衝撃が走った。

ヒリヒリとするだけだった。

痛くもないし辛くもないし泣かない。

私はお父さんを見た。

「なんだその目は何が言いたい!」

私は黙った。なんの目でもないからだ。

私が黙っていたらお父さんが私を蹴り飛ばした。

「お前には口がないのか!!」

私は地面に倒れ込んだ。

体だけ起こした。

「なぁ。聞いてんのか?」

お父さんに胸倉を掴まれグイッと引っ張られる。

私はお父さんを見てるだけだった。

何も言い返さない。

お父さんが舌打ちしながら胸倉を掴んだ手を乱暴に離す。

そしてお父さんはそのままリビングを出て部屋に戻って言った。

私は立ってほこりをはらってから椅子に座った。

いちよう手をあわせてからご飯を食べた。

お母さんは何も言わずにリビングを出ていった。

私は一人で黙々とご飯をたべる。

ご飯は味がしなかった。

食べ終わってから食器洗ってリビングが散らかっていたので片付けてからお風呂に入って眠った。

朝。六時に目が覚めた。

いつもは七時に起きるのに今日は寝が浅かったのかもしれない。

私は椅子に座って勉強をする。

そして七時になった。

私は洗面所に顔を洗いに行った。

鏡を見ると昨日お父さんに叩かれた頬が青紫になっていた。

髪を下ろしてればギリ見えないくらいの程度だ。

リビングに行くとお父さんもお母さんもいなかったからきっともう仕事に行ったのだろう。

冷蔵庫を開けると何も無かったので私はそのまま学校に行った。

「なこ、おは_____」

声のした方を振り向くと道野くんがいた。

「____なこ。どした?その傷」

…傷?

私に傷なんてあったっけ?

私は首を傾げた。

「あ、えっと、やっぱなんでもない!」

そして道野くんは苦笑いをして椅子に座った。

「きゃー。道野くん!道野くん!」

道野くんはいつも女子に囲まれている。そして今日も…

わたしは気にせず勉強を始めた。

「おーい。席つけー。出席取るぞー」

チャイムがなり先生がはいってきた。

女子達は名残惜しそうに帰っていった。

私は勉強道具をしまった。

そして先生が周りを見渡した。

「欠席はいないな。よし。なら連絡事項を話すぞー」

「もうそろそろ一年の入学式が始まるからなー。えっと確か…」

先生がノートみたいなのを開いた。

「来週の火曜だな」

うんうんと先生が頷いた。

「新一年を迎えるために心を込めて準備しろよ〜」

「うぃーす」

何人かがそう言った。

そして朝のホームルームが終わり先生が去っていった。

授業中道野くんがチラチラとこちらを見ていて集中出来なかったが気にしないことにした。

そして昼休み。私は今日も屋上へと向かう。

屋上の扉を明けた。

空は青空が広がっていた

フェンスに手を置いて景色を眺める。

ドアの開く音が聞こえてそっちの方を振り向く。

「やっぱここにいた」

道野くんだった。

道野くんはゆっくり私に近づいてくる。

そして私の前で足を止めると私のようにフェンスに手をついて景色を眺めていた。

私も景色を眺めた。

「なぁ。」

道野くんの方を向くと道野くんと目が合った。

そして、道野くんの手が段々と近づいてくる。

私は反射的に目を瞑った。

道野くんの手は昨日お父さんに叩かれた頬へと添えられた。

「この傷…ほんとにどした?」

少しだけ鼓動が上がった気がする…なにこれ。

初めての感覚だ。

私は顔を手に添えられた側に傾ける。

その瞬間道野くんの顔が赤くなって、手を離した。

そしてそっぽを向いた。

「あ、ご、ごめん。」

「ほんとに何も無いならいーんだ。」

「あ、」

道野くんが何かを思い出したようにそう言った。

「俺昼飯ここで食べるけどなこも食べるか?」

私は首を横に振った。

私に昼飯は今日もない。

お金ももうなくなりかけなのでできるだけ使いたくなかった。

「そっか…」

道野くんがそばに座った。

そして焼きそばパンの袋を開けて食べ始めた。

私はフェンスに手をついて景色を眺める。

道野くんの隣に座っててもいいんだけど今ご飯を見るとものすごく食べたくなるから見ないようにしてるのだ。

「なぁ、なこ」

道野くんの方を振り向くと目の前にたまごサンドパンがあった。

私は停止してしまった。

「あげる。たべな?」

受け取っていいのか分からなかった。

道野くんはんっとパンをまた前に出す。

私は渋々受け取った。

そして道野くんは満足したように笑い、その後隣をポンポンと叩いた。

私は指示されるように隣に座った。

そしてパンの袋を開けて確認するように道野くんの方を向いた。

「たべな?」

視線に気づいた道野くんが私にそう言った。

私は一口食べた。

その瞬間。お腹すいてたのかバクバクと食べ進める。

サンドイッチは一瞬にして終わった。

私は名残惜しそうに自分の手を見つめる。

「はっや…」

パンを食べていた道野くんがこっちをみて驚いたような顔をしている。

私は立ち上がってまたフェンスに手をついて景色を眺める。

道野くんは黙々とパンを食べていた。

チャイムがなり道野くんが立ち上がった。

「いくか」

道野くんは歩き出したけど私はついて行かなかった。

道野くんが屋上を去った後私も歩き出した。

階段を降りていくと女の子たちの声が聞こえた。

「光くん!どこ行ってたの?」

「ずっと探してたんだからね?」

相変わらず女子たちに囲まれている道野くんだった。

私はそんな女子たちの戯れは放置して教室まで歩いていく。

授業が始まった。

昼ごはんを食べて血糖値が上がったのか午後の授業は眠たかった。

放課後になり教室に一人になったところで今日も勉強を始める。

外では色んな音が聞こえる。

吹奏楽の音や、サッカー部や野球部の掛け声などが聞こえた。

結構勉強したところで時計を見ると夕方の六時半になっていたので教科書などをしまって玄関へと向かう。