20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす

 大きなピザを切り分けて私たちはそれをシェアする。
 八分の一にカットしたピザなのに、それでも大きく見える。
 その一枚を私はお皿に載せて私は赤月君について尋ねた。
 
「あの、赤月君は何の仕事してるの?」

 その問いかけに、彼は私の方を見て嬉しげな顔になり言った。

「えーと、一年前に仕事辞めて、今は模型雑誌に寄稿したり、イベント企画したり、動画の配信もちょっとしてるよ」

 なんだかすごい発言が飛び出しているんだけど?
 ちょっと私の処理が追いつかない位情報量が多い。

「うそ、そんなことしてるの? すごい」
 
 模型雑誌に寄稿って、それだけプラモを極めているってことだよね。
 全然知らなかった。
 成人までは細く、でも確実につながっていたはずなのに私は赤月君のことで何を知ってるだろう。
 幼なじみ、なのにな。
 そのことが少し寂しく思えた。

「ねえ、動画配信って何してるの?」

「んー、プラモのこととか、ゲームの配信とか」

 赤月君、なんだか歯切れの悪い答え方をする。

「それってどれくらいの頻度で配信してるの?」

「えーと、おはよう生配信はほぼ毎日かな……」

 そう自信なさそうに答えて、赤月君はピザを口に運ぶ。
 赤月君の口から出てくる言葉に未知のものが多いんだけど?
 私はピザを手にしたまま固まって、小さく首を傾げつつ言った。

「なに、そのおはよう生配信って?」

「朝、生配信しながら雑談するやつだよ」

「そんなのあるの?」

 私だって動画は見る。
 だけど動画配信者がそういうのやってるって私、知らなかった。

「え、毎朝? 毎日? すごくないそれ」

 絶対に私には無理だ。
 動画配信て、事前に録画したものを編集してそれを配信しているだけだと思っていたのに。
 私の驚きに、赤月君は恥ずかしげに笑う。

「あはは、確かに慣れるまでは大変だったかも。今は毎日のルーティーンになっているし、ラジオみたいな感じで楽しいよ。聞いてくれる人たちがいるとすごく励みになるっていうか」

「登録者どれくらいいるの?」

 そう問いかけて私はピザを食む。いろんなきのこがのっていて、噛むときのこからうまみが溢れだしておいしい。
 すると赤月君はミックスピザをお皿に取りながらちょっと、首を傾げた。

「えーと、今たぶん二十万人くらい……?」

「さっきから赤月君の話、異世界過ぎてすごすぎるんだけど。二十万人って多いでしょ絶対それ。すごくそれ見たいんだけど、ねえ、赤月君、あとでアカウントおしえてくれる?」

 おもわず早口で言うと、赤月君は顎に手を当ててにやっと笑う。

「えー、どうしようかな」

「なにそれ、教えてくれたっていいじゃないの」

 思わず口を尖らせると、赤月君はうーん、て呻る。
 
「今はまだ恥ずかしいから、今度ね」

 と、はぐらかされてしまった。
 ちょっと残念。
 でも毎朝生配信していて、プラモやゲームの配信してるってことはわかったし。
 教えてくれないなら自分で探すしかないよね。
 何とか他の情報、聞きだせないかな。
 私はピザを食べながら頭を巡らせる。
 そんな私の思考を遮るように、赤月君が口を開いた。

「ねえ、ヒスイちゃんは? 昔アイドル、好きだったよね」

 その言葉を聞いて私は一瞬固まってしまう。
 確かに私は昔からアイドルが好きだ。小学一年生のころからずっと。
 そうだ、私は昔、赤月君に好きなアイドルの事、話したっけ。
 たぶん、中学でも高校でも。友だちと推し活の話はしていたと思う。
 だから覚えていても不思議じゃない、のかな。私は赤月君の情報、全然わからないのに。
 私は苦笑して答えた。

「昔ちらっと言っただけなのに、よく覚えているね」

「そりゃーね。そのあとアイドルブームあってすごかったじゃん」

 そう答えて赤月君はピザを口に運んだ。
 確かに私たちが小学生の時に女性アイドルがすごいブームになったのよね。
 それで私もすっかりアイドルにのめり込んでいって今に至る。
 小学生の時に女性アイドルと一緒に撮った写真、今でも大切に持っているし。

「そうね。私、それでもっとアイドルの事、好きになったもの」

 そう言いながら私は歴代の推しを思い出す。
 アイドルって活動期間が短くて入れ替わり、激しいのよね。
 もう芸能界をやめている子もいるし、俳優になって活躍している子もいる。
 どの子も可愛くって私の中では永遠のアイドルだ。
 
「ヒスイちゃん、今でもアイドル好きなんだね」

「うん。今は全然有名じゃないんだけど、つばき坂二十六っていうアイドルが大好きなの」

「そうなんだ、今色んなアイドルいるよね」

 いわゆる地下アイドルと呼ばれるグループがたくさんある。
 私が好きなつばき坂はいわゆるインディーズで、精力的に地方回りをして小さいイベントに出たりしていた。
 だから赤月君がつばき坂を知っているわけがない。
 飲み物を飲んでいると、赤月君が呟くのが聞こえた。
 
「つばき坂ね……」

 その赤月君の表情がなんだか変な感じがして、私は不思議に思ったけど、突っ込みはしなかった。