20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす

 午後一時の少し前。
 私は帰る準備をして、家の外で聖那君を待った。
 家の中で待っていてもよかったし、そもそもついたら連絡すると聖那君に言われていたけど、私は待ちきれずに外に出てしまった。
 聖那君に貰ったマフラーを首に巻き、妙に静かな通りで聖那君を待つ。
 思ったよりも早く、見覚えのある車が道路の向こうから来て、私の実家の前で止まった。
 私はすぐに車に近づいて、ドアを開けて中に座る聖那君に笑いかけた。

「明けましておめでとう」

 と言いながら、私は車に乗り込む。
 聖那君は私に向かって手を振り、

「明けましておめでとう」

 と、心底嬉しそうな顔になる。
 シートに腰かけてシートベルトをしているとき、私は車のドリンクホルダーに置かれたマグの存在に気が付く。
 それは私は先月、誕生日プレゼントであげたやつだ。

「あ、使ってくれてるんだ」

「うん。家でも使ってるんだー」

「え、そうなの、ありがとう!」

 そんなに使ってくれていると思うとすごく嬉しい。

「うん。コーヒーけっこう飲むからね」

「家にコーヒーマシンいくつかあったよね。それみてこういうマグがいいのかなって思ったの」

 その私の言葉に、聖那君は感動した様な声で答えた。

「マジで。一回部屋に来ただけなのに覚えていたんだ」

 その喜ぶ様子がなんだか大げさにも思えるけれど、よほどうれしかったのかな、と自分を納得させる。
 車は町中から国道へと出て、私たちが住む翠玉市へと向かう。

「初詣どこ行く?」

「護国神社かなー。翠玉神社もいいけど駐車場狭いんだよね」

 護国神社は郊外にあって、翠玉神社は翠玉駅から歩いて一五分ほどの町中にある。

「それに駅前はだるま市やってるから混むし」

「あー。そういえば駅にポスターあったような……」

 一月一日と二日。駅の西口側でだるま市があるとかなんとか。どういうものなのかよくわからないけど、交通規制がどうのと書かれていたっけ。
 
「じゃあ護国神社のほうがいいね」

 車は翠玉市の郊外へと向かうけれど、それでもそこそこ混んでいた。
 当たり前よね。
 護国神社はこの辺りでも大きな神社だし。
 駐車場に入るだけでも三十分近く。参道から神社の本殿まで同じくらい並んだだろうか。
 私たちが参拝するころには時刻は二時半を過ぎていた。
 願い事どうしよう。
 前の人の背中を見つめ、私は悩み、隣にいる聖那君をちらり、と見る。
 彼は財布からお金を出して、幸せそうな顔で正面を見ていた。
 って、私はなぜ聖那君を見たんだろう。
 そう思い私は正面へと目をやる。
 晴れた空、でも吹く風は強くて冷たい。
 ぶるり、と震えて私も財布からお金を出した。
 そのお金を握りしめ、私は願いごとを考える。
 そして私たちの番になり、さい銭箱の前に立つ。
 必死に願い事を考えて手を合わせて出てきた願いは、

『毎日平穏に過ごせますように』

 だった。
 聖那君とのことを願うのは何か間違っていると思うし、そうなるとこれしか出てこなかった。
 参拝を終えて私たちは社務所の方へと足を向ける。
 そこにはいくつものおみくじがあって、人々が足を止めてどれにしようかと思い悩んでいるようだった。
 私も人々の後ろからそのおみくじの箱を覗く。

「やっていく?」

 という聖那君の言葉に私は頷いてお財布からお金を出した。
 一番シンプルなおみくじを選んで、そこに百円をいれ、一枚のくじを選ぶ。
 こういう時は悩まないんだ。
 聖那君もおみくじをひいて、そこから離れながらふたりでおみくじを開いた。
 
「あ、吉だ」

「俺も吉だったよー。お揃いだね」

「あはは、そうだね」

 私はおみくじの内容を読み、恋愛のところを見てしまう。

「迷うことなかれ」

 なんて書いてある。
 その隣にある縁談のところには、

「心の声に従え」

 とある。
 なんだか私の背中を押そうとしているような言葉たちだ。
 私はおみくじを折りながら聖那君の方を見た。

「内容どうだった?」

「そうだねー。恋愛のところに、『心に決めた人あり』なんて書いてある」

 そう照れた様子で言いながら、彼は私におみくじを見せてきた。
 本当に、そう書かれていて笑ってしまう。
 そして縁談のところには、

「時を待てば自然に」

 なんてある。

「へえ。こういうのあんまりちゃんと見たことなかったけど、こんな具体的に書かれることあるんだ」

「そうだね。これ縛ったら御守り見て帰ろうか」

 そう言いながら聖那君もおみくじを縦長に折る。

「そうだね」

 私は頷き答えつつ、聖那君の様子を伺う。
 聖那君は、心の決めた人、いるのかな。
 そんなこと気にしても仕方ないのに気になってしまうのはもう、そうとう私、追い詰められているような気がする。