20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす

 今日も結局残業になり、私は疲れて家に帰る。
 もう何もする気になれなくて、帰り道、コンビニでお弁当を買ってきた。
 これがまだ、大晦日まで続くのか……
 そう思うと身体がさらに重く感じてしまう。
 よかった、明日は休みだ。明日も寝て過ごそう。
 私はお弁当を温めて、夕飯を食べる準備を進めた。
 推しの動画を見て癒されながら夕飯を食べたあと、私は机を片付けて今日買ってきたものを袋から取り出す。
 例の白いクマッガイのプラモとニッパーのセットだ。
 私はまずニッパーが入ったセットのパッケージを開ける。
 持ち手が赤いニッパーに、カッター、ピンセットもある。

「ピンセットって何に使うんだろう……?」

 不思議に思いながらそれを見つめて、私はプラモの方の箱を開ける。
 中から出てきた、白や青のパーツ。それに小さなシールが入っている。

「何このシール」

 呟きて私は説明書に目を通した。
 シールはデカールと言うらしく、プラモを装飾するものらしい。
 私は説明書を見ながらパーツが張っている袋を開け、中身を確認した。
 パーツにはそれぞれ番号が振られていて、説明書通りに切り離して組み立てていくらしい。
 スマホで調べた感じ、そんな難しいことはしないみたいだから、すぐ作れそうだ。
 そう思い私は、つばき坂の音楽をかけながらプラモを作り始めた。
 このプラモの大将年生は八歳からだけど、けっこうパーツ切り離すの、難しくないかな。パーツ小さいし。
 ニッパーで切り離すと、パーツのところに切り離した部分が残っちゃうんだけど。きれいにできないのかな。
 そうだ、と思い出して私はテレビのリモコンで動画を変える。
 聖那君……じゃなくって、セナ=ジェイドの動画でプラモ初心者向け、っていうのがあったはず。
 検索で動画を探して、私はそれを再生する。
 動画が少し進んだところで私が知りたい話が出てくる。

『この出っ張った部分、ゲートっていうんですけど、こうやってニッパーで少しずつ薄く切っていくと痕がついたりしないです』

 そう話しながらセナは先端の細いニッパーで少しずつ出っ張りを切っていく。

「へえ……ゲート……」

 私はその動画でやりかたを確認して、ニッパーでちょっとずつ出っ張りを小さくしていく。
 細かい作業するの、久しぶりだな……
 そうやってパーツを切り離しては出っ張りを削り、くっつける作業を繰り返してどれくらい経っただろう。
 たぶん三〇分ちょっとくらいだったと思う。

「できた!」

 大きさは多分一〇センチもない。小さなクマの白いプラモがテーブルの上にちょこん、と立っている。
 ちゃんと台座もついていて安定させられるのすごくいい。
 胸の青いリボンに、背中のリボンがすごくかわいい。
 こんなに小さいのに腕、ちゃんと動かせてちょっとしたポーズもとれる。
 私はその小さなクマの腕を上げせ、

「かわいいー」

 と声に出す。
 自分でつくった、初めてのプラモ。
 こんなに可愛いんだなー。
 それを見てるとちょっと複雑になってしまう。
 こんなに頑張ってつくった物を私ってば壊したんだから、聖那君が「嫌い」って思わず言ってしまうのも仕方ないよね。
 改めて私はあの時聖那君が感じたであろう痛みに、想いを馳せる。
 
「そうだ」

 私はスマホをとりだして、カメラをプラモに向ける。
 写真を撮り、メッセージアプリを開いて聖那君に写真を送る。

『今日、聖那君に教えてもらったニッパーのセット買って、自分で作ったよ! 教えてくれてありがとう!』

 するとすぐに既読がついて、返信が来る。

『クマッガイだ! 可愛いね。自分で作るなんてすごいじゃん』

 と、全肯定してくれる。
 聖那君、決して否定しないし、何か提案をしてくるわけじゃない。
 押し付けてくることもない。この感じ、すごく心地いい。
 これが壊れるのは嫌だけど、でもこのまま、というのもなんだか都合が良すぎるようにも思う。
 私はどうしたいんだろう。そう思いながら私は返事を返した。

『ありがとう。自分で作るの楽しかった』

 すると、嬉しそうな顔の猫のスタンプが返ってくる。
 そんなやりとりに思わず顔がゆるんでしまう。
 私の中でどんどん聖那君の存在、大きくなっているような気がする。
 だって、あのプラモの出っ張り、どうしようって思った時、真っ先に聖那君の動画見よう、って思っちゃったし。今だって出来た物を真っ先に見せようと思ってしまったもの。
 日に日に私の中で大きくなっていく聖那君の存在。
 なのに今、私たちは次の約束、していない。
 次に聖那君と会えるのはいつだろう。
 もうすぐ年末、そして年があけてしまう。
 私はスマホの画面を見つめて呟く。

「お正月は休みだから……初詣、誘ってみる?」

 しばらく考えて、私は聖那君にメッセージを送りつけた。