私がカツラカメラ翠玉店にやってきて二ヶ月が過ぎた、十二月十九日金曜日。
平日だというのに朝から込み合っていた。
本当に毎日がお正月商戦みたいでレジが途切れない。
続々と会計に来るお客さんたち。
ゲームの説明を求めるお客さん。
「すみませーん、商品こと聞きたいんですけど」
「はい、どういった内容ですか?」
と、私は答える。
以前は声をかけられても私、すぐに無線でヘルプを呼んでいた。
だけど二ヶ月も経つと、さすがに自分である程度対応できるようになっていた。
「これってテレビにどうやって繋ぐんですか?」
「このドックをHDMIケーブルでつなげる形になります」
「本体以外に必要な物って何ですか?」
「保護フィルムはあったほうがいいかなと思います。あとは持ち運ぶようでしたらポーチと場合によってはマイクロSDカードが必要になるかと思います。保存容量は――」
そう答えられるようになって、すごく嬉しい。
ちょっと前まで、ゲーム機の保存容量すらわかんなかったのに。
ゲーム機ってプレゼント需要高いんだなぁ、って感心してしまう。
四万とか、高い物は十万円っていうのもあるのに。
ボーナスでたあとだからか、現金支払いの人もすごく多かった。
今日は商品の入荷もあってすごく忙しい。
今日も残業になって、帰るころにはへとへとだった。
夜の七時半過ぎ、従業員出入り口から外に出ると冷たい風が吹く。
「わぁ……寒い」
私は聖那君から貰ったマフラーに顔を半分埋め、駅に向かって歩く。
聖那君のお陰であの男性客は姿を見せなくなっていた。
少なくとも私がいる時間には来ていないと思う。
まあ忙しいから気が付かないだけかもしれないけれど。
だから聖那君の迎えも断っていた。
さすがに迎えに来てもらう理由、ないし。断ったらなんだか残念そうだったけれど。
私はバッグに下げたみつきちゃんの缶バッチを見る。
「明後日、結局休めなかったんだよなぁ」
と、小さく息を吐く。
クリスマス前の日曜日で滅茶苦茶混むからって、休み、却下されてしまった。
そのかわり、休憩時間がかぶれば見に行く許可は得た。
そもそもアイドル祭りはうちのお店の野外ステージでやるイベントだから、休憩時間に外に出るのは問題はない。
私のお昼休憩は一時ごろからが多いし見に行こうと思えばいけるはず、たぶん。行けるといいなぁ。
そしてその日の夜、私は聖那君と駅の西口に行く約束になっている。
私の休みの日を伝えたら、十二月二十一日の夜がいい、って言い出したんだよね。
『誕生日の前の日で忙しいんじゃないの? 準備とか』
と言ったら、
『大丈夫大丈夫! ヒスイちゃん、たぶん残業だよね。俺の仕事あるからちょうどいいよ』
という返信が来た。
仕事の後とかすごく忙しくないかな。
それは私もか。
「誕生日、何もいらないって言われたけどやっぱりそういうわけにはいかないよなぁ」
と思って、私はちょっとしたプレゼントを用意した。
スタバのタンブラーにギフトカードだけど。
部屋にコーヒーマシンいくつかあったからきっと、コーヒー好きなんだろうって思ったからだ。
「明日も明後日も忙しいんだろうなぁー」
と呟き、私は大きく腕を上にあげて伸びをする。
あと二日働けば休みだし、頑張ろう。
クリスマスすぎたらちょっとはマシになるのかなぁ。
そんな淡い期待を抱いて、私は駅へと急いだ。
十二月二十一日日曜日。
私は正直、クリスマス商戦というものを舐めていたと思う。
昨日も今日も、朝からお客さんがすごかった。
途切れない会計の列。
レジを抜けて一歩歩けば、次から次へとお客さんから声をかけられる。
「すみません、これ別の色ないですか?」
「プラモなんですけど、これ入荷してないんですか?」
と、スマホの画面を見せてくるお客さんたち。
ただトイレに行きたいだけなのに、従業員の控え室のほうに行くまでに五人に声をかけられた。
黒物のフロアには専門の営業スタッフがいて、案内待ちのためのカウンターがある。
けれどエンタメコーナーは営業という概念がない。
皆がお客さんの問い合わせに答えて、皆がレジに入りる。
役割り分担がないから、全員がそれなりのスキルを求められてしまう。
やりがいがあるといえばあるけど、ほんと、覚えることが多すぎる。
一時前に何とかレジを交代し、私は急いでお昼休憩に入る。
慌ただしくベストを脱いでカーディガンを羽織り、従業員出入り口からお店の野外ステージに向かった。
想像よりもお客さんの数は多かった。
風は冷たいけれど空はよく晴れていて、気候は悪くない。
ステージ前には数十人のお客さんが集まって、ノリノリで音楽を聞いていた。
ステージの上で歌い踊るのは、つばき坂二十六だ。
今日来ているのは十二人で、そのなかに私の推しであるみつきちゃんの姿を探す。
今日の衣装は皆同じ色の衣装だけど、胸に着けているリボンや頭飾りの色がそれぞれ違う。
メガネをかけたメンバーはみつきちゃんだけだから、すぐに見つけることができた。
ステージの端の方で今日も踊ってる。
可愛い。
メガネでちょっとキリッと見える清楚なお嬢様っぽい子。
みつきちゃんだけじゃなく、皆可愛い。
この若い間の一瞬の輝きがすごく眩しくみえて、アイドルが好きな理由なのよね。
少し時間がおしてるみたいで、一曲目が終わる頃だった。
私は観客の後ろの方で、推しの姿を見つめる。
ブラウスにカーディガン着ているだけだから少し寒い。
腕を組んで震えていると、隣から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ヒスイちゃん」
「……え、あ……せ、聖那君……?」
そこにいたのは、黒のスーツに黒いコートを着て、首にネックストラップをかけた聖那君だった。
平日だというのに朝から込み合っていた。
本当に毎日がお正月商戦みたいでレジが途切れない。
続々と会計に来るお客さんたち。
ゲームの説明を求めるお客さん。
「すみませーん、商品こと聞きたいんですけど」
「はい、どういった内容ですか?」
と、私は答える。
以前は声をかけられても私、すぐに無線でヘルプを呼んでいた。
だけど二ヶ月も経つと、さすがに自分である程度対応できるようになっていた。
「これってテレビにどうやって繋ぐんですか?」
「このドックをHDMIケーブルでつなげる形になります」
「本体以外に必要な物って何ですか?」
「保護フィルムはあったほうがいいかなと思います。あとは持ち運ぶようでしたらポーチと場合によってはマイクロSDカードが必要になるかと思います。保存容量は――」
そう答えられるようになって、すごく嬉しい。
ちょっと前まで、ゲーム機の保存容量すらわかんなかったのに。
ゲーム機ってプレゼント需要高いんだなぁ、って感心してしまう。
四万とか、高い物は十万円っていうのもあるのに。
ボーナスでたあとだからか、現金支払いの人もすごく多かった。
今日は商品の入荷もあってすごく忙しい。
今日も残業になって、帰るころにはへとへとだった。
夜の七時半過ぎ、従業員出入り口から外に出ると冷たい風が吹く。
「わぁ……寒い」
私は聖那君から貰ったマフラーに顔を半分埋め、駅に向かって歩く。
聖那君のお陰であの男性客は姿を見せなくなっていた。
少なくとも私がいる時間には来ていないと思う。
まあ忙しいから気が付かないだけかもしれないけれど。
だから聖那君の迎えも断っていた。
さすがに迎えに来てもらう理由、ないし。断ったらなんだか残念そうだったけれど。
私はバッグに下げたみつきちゃんの缶バッチを見る。
「明後日、結局休めなかったんだよなぁ」
と、小さく息を吐く。
クリスマス前の日曜日で滅茶苦茶混むからって、休み、却下されてしまった。
そのかわり、休憩時間がかぶれば見に行く許可は得た。
そもそもアイドル祭りはうちのお店の野外ステージでやるイベントだから、休憩時間に外に出るのは問題はない。
私のお昼休憩は一時ごろからが多いし見に行こうと思えばいけるはず、たぶん。行けるといいなぁ。
そしてその日の夜、私は聖那君と駅の西口に行く約束になっている。
私の休みの日を伝えたら、十二月二十一日の夜がいい、って言い出したんだよね。
『誕生日の前の日で忙しいんじゃないの? 準備とか』
と言ったら、
『大丈夫大丈夫! ヒスイちゃん、たぶん残業だよね。俺の仕事あるからちょうどいいよ』
という返信が来た。
仕事の後とかすごく忙しくないかな。
それは私もか。
「誕生日、何もいらないって言われたけどやっぱりそういうわけにはいかないよなぁ」
と思って、私はちょっとしたプレゼントを用意した。
スタバのタンブラーにギフトカードだけど。
部屋にコーヒーマシンいくつかあったからきっと、コーヒー好きなんだろうって思ったからだ。
「明日も明後日も忙しいんだろうなぁー」
と呟き、私は大きく腕を上にあげて伸びをする。
あと二日働けば休みだし、頑張ろう。
クリスマスすぎたらちょっとはマシになるのかなぁ。
そんな淡い期待を抱いて、私は駅へと急いだ。
十二月二十一日日曜日。
私は正直、クリスマス商戦というものを舐めていたと思う。
昨日も今日も、朝からお客さんがすごかった。
途切れない会計の列。
レジを抜けて一歩歩けば、次から次へとお客さんから声をかけられる。
「すみません、これ別の色ないですか?」
「プラモなんですけど、これ入荷してないんですか?」
と、スマホの画面を見せてくるお客さんたち。
ただトイレに行きたいだけなのに、従業員の控え室のほうに行くまでに五人に声をかけられた。
黒物のフロアには専門の営業スタッフがいて、案内待ちのためのカウンターがある。
けれどエンタメコーナーは営業という概念がない。
皆がお客さんの問い合わせに答えて、皆がレジに入りる。
役割り分担がないから、全員がそれなりのスキルを求められてしまう。
やりがいがあるといえばあるけど、ほんと、覚えることが多すぎる。
一時前に何とかレジを交代し、私は急いでお昼休憩に入る。
慌ただしくベストを脱いでカーディガンを羽織り、従業員出入り口からお店の野外ステージに向かった。
想像よりもお客さんの数は多かった。
風は冷たいけれど空はよく晴れていて、気候は悪くない。
ステージ前には数十人のお客さんが集まって、ノリノリで音楽を聞いていた。
ステージの上で歌い踊るのは、つばき坂二十六だ。
今日来ているのは十二人で、そのなかに私の推しであるみつきちゃんの姿を探す。
今日の衣装は皆同じ色の衣装だけど、胸に着けているリボンや頭飾りの色がそれぞれ違う。
メガネをかけたメンバーはみつきちゃんだけだから、すぐに見つけることができた。
ステージの端の方で今日も踊ってる。
可愛い。
メガネでちょっとキリッと見える清楚なお嬢様っぽい子。
みつきちゃんだけじゃなく、皆可愛い。
この若い間の一瞬の輝きがすごく眩しくみえて、アイドルが好きな理由なのよね。
少し時間がおしてるみたいで、一曲目が終わる頃だった。
私は観客の後ろの方で、推しの姿を見つめる。
ブラウスにカーディガン着ているだけだから少し寒い。
腕を組んで震えていると、隣から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ヒスイちゃん」
「……え、あ……せ、聖那君……?」
そこにいたのは、黒のスーツに黒いコートを着て、首にネックストラップをかけた聖那君だった。
