20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす

 用意されたカットケーキは、チョコレートケーキ、チーズケーキ。
 私、チョコレート系のケーキとチーズケーキがいい、って言ったんだよね。
 どちらもおいしそうだ。
 動画を見ながら私たちはケーキを食べ終える頃、聖那君が、

「ねえヒスイちゃん」

 と言い、ソファーの後ろに身体を伸ばした。
 
「一カ月遅れだけど、これ、誕生日のプレゼント」

 と言い、差し出されたのは大き目な、赤いラッピング袋だった。

「え、あ、ありがとう。わざわざいいのに」

 申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが私の中でせめぎ合う。
 私はその袋を受け取り、何が入っているのか考えた。
 けっこう軽い。
 なんだろう、これ。

「悩んだんだけど。ほら、新しいマフラー欲しい、って言っていたから」

 そういえばチラッとそんな話をしたような気がする。
 
「開けていい?」

「いいよ」

 私は袋を縛る紺色のリボンをほどき、中を見る。
 出てきたのは紺色のマフラーだった。
 小さくブランドのマークが入っているだけの、シンプルなものだ。
 これ、みつきちゃんのカラーだ。

「ありがとう、超助かる」

「よかった。喜んでくれて」

 そう、聖那君はとても嬉しげな表情を見せる。

「ねえ聖那君だって来月誕生日でしょ?」

「あぁ、うん。そうだよ。十二月二十二日が誕生日だけど」

 やっぱりそうだ。その辺に終業式、あったしな……本当にクリスマスの直前だ。
 
「そっかぁ……その日、なんかするの?」

「いつも誕生日の生配信してるよ。その為に準備してるし」

 そうだよねえ。私が割って入る隙間なんてあるわけがない。
 そもそも恋人じゃないし。それならこのお礼を私はどうしようか。
 私は聖那君の顔を見て、彼の様子を伺いつつ言った。

「いろいろしてもらったから何かお礼、したいんだけど……誕生日、何か欲しいものある?」

「俺に何かくれるの?」

 と、声を弾ませる聖那君。

「さすがにここまでしてもらって、何もしないはないって」

 ひと月遅れで誕生日をお祝いしてくれて、仕事の日、迎えに来てくれて。変なお客さんを撃退してくれた。
 お礼のひとつやふたつしたい。
 聖那君は嬉しそうな顔で腕を組み、悩み始める。

「えー、どうしよう。その日は夜、配信あるし……昼間はその準備もあるし……当日は難しいな。え、どうしよう……」

「二十二日って月曜日だよね。いつもの感じだとその日、私休みなんだよね」

 スマホでカレンダーを見ながら言うと、え? っていう苦しそうな声がした。

「いや、でも今からスケジュール変えられない……え、どうしよう……その前、いや、仕事あるし……」

 真剣に悩む聖那君。
 何をそんなに悩んでいるんだろう。
 私、何が欲しいか聞いただけなんだけど……私は不思議に思いつつ、麦茶を飲む。
 面白いな、聖那君。
 まあ私も何が欲しいって言われたらむちゃくちゃ悩むけれど。
 安いものは言えないし、だからって高い物は気が引ける。ほどほどの値段って難しいんだよね。

「うーん……えーと……ねえヒスイちゃん」

 しばらく悩んだ聖那君は、すごく真剣な顔で私の顔を見る。
 決まったのかな。

「あの、ヒスイちゃんが嫌じゃなければ、だけど、イルミネーション見に行かない?」

「イルミネーション?」

 私の言葉に、聖那君は頷く。

「うん。ほら、翠玉駅の西口の方でイルミネーションやってるでしょ。どうかな」

 私の様子を伺う様な目で、聖那君は見つめてくる。
 イルミネーションかぁ。全然見に行ってないな。
 都内でもけっこうやっていたけど通り過ぎるだけだった。
 私は笑顔で頷き、

「いいよ」

 と答える。
 すると聖那君はぱっと明るい顔になりほっとしたように小さく息をつく。

「よかった。仕事帰りとかでもいいかな? ヒスイちゃんの休みの前の日に行きたいからわかったら教えて」

 そう言った聖那君はとても幸せそうに見えた。

「でもそんなのでいいの? せっかくだし何かプレゼント用意するけど」

 今日の誕生日だって、もともとは私が何かお礼がしたい、でやることになったものだ。まるで聖那君にとって、私との時間がご褒美になっているみたいに感じる。
 
「俺にとってヒスイちゃんと過ごせるのが一番嬉しいことだからね。物よりも嬉しいんだよ」

 と答える。
 そういうものなんだろうか。
 よくわからないけれど、それはそれで私の気が済まないんだよなぁ。
 私は悩み、

「じゃあ私、その日にご飯奢るってことでどうかな」

 と提案する。
 欲しいものがないのなら、ご飯奢るのが一番楽だ。
 ボーナスの後だし、いくらかかっても大丈夫だから。
 すると聖那君はさらに嬉しそうな顔になって、

「ありがとう」

 と、上ずった声答える。
 いっぱいお金稼いでいて、ファンも多いのに……私との時間がプレゼントになるんだ。
 人が幸せそうだと私も嬉しいしな。
 本人が幸せならそれでいいか。
 そう自分を納得させて、私はもらったプレゼントをぎゅっと抱きしめた。