聖那君には何も持ってこなくていい、と言われたけれど、さすがにそういうわけにも行かないと思い、遠回りしてお店に寄り、お酒とお菓子を買った。
小さい日本酒のスパークリングなら大丈夫かな。飲むつもりはないんだけど、少しくらいなら、と思って買ってみた。前から飲んでみたかったんだよね、日本酒のスパークリング。
通りを歩きながら私は自分の服装を見る。
焦げ茶色のワイドパンツに白のニット。それに黒いコート。
バッグはいつものショルダーバッグだけど。
幼なじみとはいえ、とりあえず異性だし、とちょっと意識してしまう。
だからといってスカートはちょっと嫌だな、と思って私はワイドパンツを選んだ。
通りを歩くとびゅうっと冷たい風が吹き、顔が冷たく感じる。
やっぱりこっちのほうが都内より寒い。
マフラー買わないとなぁ、って思ってまだ買ってないんだよなぁ。吐く息が白い。
平日の日中は、人通りがすくない。
あっという間に私は聖那君のマンション前にたどり着く。
すると、まるではかったかのように聖那君が中から出てきた。
ジーパンに深緑色のパーカーを羽織った彼は、手を上げて微笑む。
「ヒスイちゃん、いらっしゃい」
「聖那君、こんにちは。部屋番号教えてくれれば行ったのに」
言いながら私は慌てて彼の前に立つ。
私、部屋番号を教えてもらっていない。だから私は、マンション前に着いたら教えてもらおうと思っていた。
彼は頬に手を当てて、くすり、と笑う。
「迎えに来たかったからねー。じゃあ行こうよ。頼んでる物がもうすぐ来るから」
「何頼んだの?」
「要望通りのピザ。あとスープ作ってある」
そう答えながら聖那君は私を伴いマンションの中に入る。
エレベーターに乗り、十階に着いたとき、私はあたりの風景を見渡した。
「見晴らしいいね」
「うん、夏は部屋から花火が見えるよ」
「え、うそ、いいなー」
そんな話をしながら聖那君の部屋へと向かう。
一〇〇五号室が彼の部屋だった。
鍵を開けて中に入ると、正面に扉が見える。
「お邪魔しまーす」
廊下を進んで奥に行くと、広いリビングが現れた。
一〇畳はかるくありそうな広い部屋。
壁際に大きなテレビがあって、ソファーに本棚。意外に物が少ない。
聖那君はキッチンの方に入って言った。
「飲み物どうする? 麦茶とジュース、コーヒーと紅茶があるけど」
「えーと、お茶がいいな」
「わかった」
そして聖那君はコップを用意する。
キッチンを見ると、コーヒーマシンがいくつか置いてある。
コーヒー好きなのかな。
そんな彼に私は買ってきたものが入ったエコバッグを掲げて言った。
「あの、いるかわかんないけどお菓子とあと、お酒買ってきた」
「ありがとう。ちょっとそこに置いといてくれる?」
聖那君はキッチンのカウンターの上を示したので、私はそこに袋の中身を置いた。
そのあとピザが届き、リビングのテーブルに料理が並ぶ。
大きなピザと、コンソメスープ、サラダ。
「あとケーキも買ってあるから後で食べようね。あ、何か見たいものあるなら動画つけてもいいよ」
「え、ほんと?」
私はソファーに腰かけると、リモコンを手にして動画アプリをひらく。
するとおすすめ動画に出てきたのは聖那君の動画やプラモの動画、それに私が好きなつばき坂の動画も出てくる。
そういえば動画見たって言っていたっけ。
私が大好きなものを見てくれるって嬉しくなる。
どれにしようかな。やっぱり音楽の方がいいかな。
私はつばき坂のライブ動画を選んでリモコンを置いた。
二年前くらいの、小さなライブハウスでのライブ動画だ。
もちろんみつきちゃんも出ている。
アイドル特有の乗りのいい音楽が流れて、私はにんまりと笑って動画を見つめた。
かわいい。可愛いがいっぱいで見てるだけで幸せになれる。
ご機嫌の私の隣に、聖那君が座る。
「食べようか」
「うん、いただきます」
「いただきます」
ピザ屋さんのピザを食べるのなんて何年振りだろうか。
「このコンソメスープは聖那君が作ったの?」
「そうだよ」
「おいしい。料理できるんだねー」
私もできるけど、ウィンナー炒めたり卵を焼くくらいしかしないなぁ。
スープなんて何年も作っていないと思う。
「コンソメスープって、シチューやカレーにもできるでしょ。だからけっこう作るんだよね」
「あーたしかに。他にも何か作ったりするの?」
「パンとか、ピザとかつくったことあるよ」
「えー、すごい」
聖那君、私より料理できるかもしれない。
動画を見ながら料理を食べ、私は時々テレビを指差して、声を上げた。
「あ、あの背中私! この時のライブはねー」
って想い出を語ると、聖那君は笑って話を聞いてくれた。
「けっこうライブ、行ってるんだね」
「都内に住んでいるときは、行ける限り行っていたんだよね」
そんな話をしながら私たちは食事をすすめていく。
ピザ一枚とサラダ、スープだから全部食べても腹いっぱい、にはならなかった。
このあとケーキがあることを考えればちょうどいい感じだ。
「どうする、ケーキすぐ食べる?」
「たべるたべる!」
推しについてたくさん語って、私は機嫌が良かった。
推しを布教できるのはすごくうれしい。しかも聖那君、ほんとうに動画を見てくれているみたいだし。
ケーキを冷蔵庫からだしながら、聖那君は言った。
「来月のアイドルイベントの日、休めそうなの?」
「う……わ、わかんない」
とりあえず、シフト希望にはバツを書いたけれど、時期が時期なので希望通りに休めるかは微妙と、事前に言われている。
「つばき坂、一時からだから最悪おひる休憩に抜けて見に行くこともできるかなって思っていて」
「あぁ、そっか。そういう手もあるのか。たしかにクリスマス前の週末なんて激混みだろうしねー」
「うん。地元の色んなアイドル出るしキッチンカーも来るって書いてあったっけ」
けっこう賑やかなイベントになりそうなんだよね。
せっかく地元に来るんだから絶対に見たい。
何が何でも見たい。
「見られるといいね」
と言い、聖那君はテーブルにケーキがのった熊柄の紙皿を置いた。
小さい日本酒のスパークリングなら大丈夫かな。飲むつもりはないんだけど、少しくらいなら、と思って買ってみた。前から飲んでみたかったんだよね、日本酒のスパークリング。
通りを歩きながら私は自分の服装を見る。
焦げ茶色のワイドパンツに白のニット。それに黒いコート。
バッグはいつものショルダーバッグだけど。
幼なじみとはいえ、とりあえず異性だし、とちょっと意識してしまう。
だからといってスカートはちょっと嫌だな、と思って私はワイドパンツを選んだ。
通りを歩くとびゅうっと冷たい風が吹き、顔が冷たく感じる。
やっぱりこっちのほうが都内より寒い。
マフラー買わないとなぁ、って思ってまだ買ってないんだよなぁ。吐く息が白い。
平日の日中は、人通りがすくない。
あっという間に私は聖那君のマンション前にたどり着く。
すると、まるではかったかのように聖那君が中から出てきた。
ジーパンに深緑色のパーカーを羽織った彼は、手を上げて微笑む。
「ヒスイちゃん、いらっしゃい」
「聖那君、こんにちは。部屋番号教えてくれれば行ったのに」
言いながら私は慌てて彼の前に立つ。
私、部屋番号を教えてもらっていない。だから私は、マンション前に着いたら教えてもらおうと思っていた。
彼は頬に手を当てて、くすり、と笑う。
「迎えに来たかったからねー。じゃあ行こうよ。頼んでる物がもうすぐ来るから」
「何頼んだの?」
「要望通りのピザ。あとスープ作ってある」
そう答えながら聖那君は私を伴いマンションの中に入る。
エレベーターに乗り、十階に着いたとき、私はあたりの風景を見渡した。
「見晴らしいいね」
「うん、夏は部屋から花火が見えるよ」
「え、うそ、いいなー」
そんな話をしながら聖那君の部屋へと向かう。
一〇〇五号室が彼の部屋だった。
鍵を開けて中に入ると、正面に扉が見える。
「お邪魔しまーす」
廊下を進んで奥に行くと、広いリビングが現れた。
一〇畳はかるくありそうな広い部屋。
壁際に大きなテレビがあって、ソファーに本棚。意外に物が少ない。
聖那君はキッチンの方に入って言った。
「飲み物どうする? 麦茶とジュース、コーヒーと紅茶があるけど」
「えーと、お茶がいいな」
「わかった」
そして聖那君はコップを用意する。
キッチンを見ると、コーヒーマシンがいくつか置いてある。
コーヒー好きなのかな。
そんな彼に私は買ってきたものが入ったエコバッグを掲げて言った。
「あの、いるかわかんないけどお菓子とあと、お酒買ってきた」
「ありがとう。ちょっとそこに置いといてくれる?」
聖那君はキッチンのカウンターの上を示したので、私はそこに袋の中身を置いた。
そのあとピザが届き、リビングのテーブルに料理が並ぶ。
大きなピザと、コンソメスープ、サラダ。
「あとケーキも買ってあるから後で食べようね。あ、何か見たいものあるなら動画つけてもいいよ」
「え、ほんと?」
私はソファーに腰かけると、リモコンを手にして動画アプリをひらく。
するとおすすめ動画に出てきたのは聖那君の動画やプラモの動画、それに私が好きなつばき坂の動画も出てくる。
そういえば動画見たって言っていたっけ。
私が大好きなものを見てくれるって嬉しくなる。
どれにしようかな。やっぱり音楽の方がいいかな。
私はつばき坂のライブ動画を選んでリモコンを置いた。
二年前くらいの、小さなライブハウスでのライブ動画だ。
もちろんみつきちゃんも出ている。
アイドル特有の乗りのいい音楽が流れて、私はにんまりと笑って動画を見つめた。
かわいい。可愛いがいっぱいで見てるだけで幸せになれる。
ご機嫌の私の隣に、聖那君が座る。
「食べようか」
「うん、いただきます」
「いただきます」
ピザ屋さんのピザを食べるのなんて何年振りだろうか。
「このコンソメスープは聖那君が作ったの?」
「そうだよ」
「おいしい。料理できるんだねー」
私もできるけど、ウィンナー炒めたり卵を焼くくらいしかしないなぁ。
スープなんて何年も作っていないと思う。
「コンソメスープって、シチューやカレーにもできるでしょ。だからけっこう作るんだよね」
「あーたしかに。他にも何か作ったりするの?」
「パンとか、ピザとかつくったことあるよ」
「えー、すごい」
聖那君、私より料理できるかもしれない。
動画を見ながら料理を食べ、私は時々テレビを指差して、声を上げた。
「あ、あの背中私! この時のライブはねー」
って想い出を語ると、聖那君は笑って話を聞いてくれた。
「けっこうライブ、行ってるんだね」
「都内に住んでいるときは、行ける限り行っていたんだよね」
そんな話をしながら私たちは食事をすすめていく。
ピザ一枚とサラダ、スープだから全部食べても腹いっぱい、にはならなかった。
このあとケーキがあることを考えればちょうどいい感じだ。
「どうする、ケーキすぐ食べる?」
「たべるたべる!」
推しについてたくさん語って、私は機嫌が良かった。
推しを布教できるのはすごくうれしい。しかも聖那君、ほんとうに動画を見てくれているみたいだし。
ケーキを冷蔵庫からだしながら、聖那君は言った。
「来月のアイドルイベントの日、休めそうなの?」
「う……わ、わかんない」
とりあえず、シフト希望にはバツを書いたけれど、時期が時期なので希望通りに休めるかは微妙と、事前に言われている。
「つばき坂、一時からだから最悪おひる休憩に抜けて見に行くこともできるかなって思っていて」
「あぁ、そっか。そういう手もあるのか。たしかにクリスマス前の週末なんて激混みだろうしねー」
「うん。地元の色んなアイドル出るしキッチンカーも来るって書いてあったっけ」
けっこう賑やかなイベントになりそうなんだよね。
せっかく地元に来るんだから絶対に見たい。
何が何でも見たい。
「見られるといいね」
と言い、聖那君はテーブルにケーキがのった熊柄の紙皿を置いた。
