今、Iの歌を

ミリアはそう言い頭を下げたものの、ミスター・シノノメは挨拶を返すことなく、寝室のドアは閉ざされた。バタン、という音がやけに大きくミリアの耳に響く。

(掃除は、ミスター・シノノメが寝てしまったからできない。洗濯物は畳んで片付けてあるし……)

グルリとミリアはリビングを見回す。必要最低限の家具だけが置かれたリビングは、埃一つ落ちていない。棚も整理されている。ミスター・シノノメの几帳面で綺麗好きな性格が出ていた。

(私の仕事は……)

キッチンにミリアは向かう。冷蔵庫を開けると、ほとんど何も入っていなかった。ペットボトルの水とコーヒーだけが冷やされている。食器棚にも必要最低限しか皿は入っておらず、シンクにも洗い残した食器等は残っていない。

(私の仕事は、ここにはどこにもない……?)

会社にも必要されていない。ミスター・シノノメからも必要されていない。この部屋に広がっているのは、ただ果てしない孤独だった。