今、Iの歌を

音楽が好きでギターが実は弾けること。お茶漬けが好きなこと。犬が好きで、子どもの頃に実家で飼っていたこと。仙台で生まれ育ったこと。ミスター・シノノメは微笑んで言った。

「いつか、ミリアにも仙台の景色を見せてやりたい。すごくいいところなんだ」

そう言われた時、ミリアの胸がどこか温かくなった。彼女はミスター・シノノメの手に触れる。

「いつか、私を仙台に連れて行ってください。ミスター・シノノメの生まれ育った場所を知りたいです」

だが、その約束が叶うことはなかった。その約束を交わした数ヶ月後、ミスター・シノノメは事故で帰らぬ人となったのだ。

冷たくなった彼の体にミリアは触れた。葬儀の際、焼かれて骨となった彼をミリアは見た。何ヶ月もミリアはミスター・シノノメと暮らした部屋でぼんやり過ごした。

「ミスター・シノノメ」

そう声をかけても、もう返事をしてくれる存在はいない。部屋の隅に置かれたギターを見る。ミスター・シノノメはたまにギターを弾いてくれた。