想いはきっと痛くない

柔らかい陽の光が、薄いカーテン越しに目の前のプリントを照らす。
まるで、ちゃんとやりなとでも言うように。


壁の先のグラウンドからは、短距離走の笛の音が聞こえる。同時に、男子の番なのか女子の歓声も聞こえてくる。

相対するように、静かなこの部屋に「はぁ」と小さなため息が零れる。


今日も、私は保健室に一人。
真っ白な空間に、消毒の匂いとともに一人置かれる。

しかたないのは、わかってる。でも、たまに聞こえてくる楽しそうな声に、やっぱり惹かれてしまう。


漫画で見るような、夢に描くような青春を送りたい。そう、思ってしまう。
仲のいい子たちと、くだらないことで笑って、放課後の寄り道とか。テスト勉強とか。それこそ恋愛とか。


でも……叶わない。私では、無理だった。


「はぁ……」


また、ため息が零れた。
広い部屋に、小さなため息。誰に聞かれることもない、小さな音。


「一人は、暇だなぁ」


目の前に置かれた私用のプリントは、半分にも満たず止まっている。このプリントはこの時間内に終わらせるものなのに、やる気が出ない。

唯一の話し相手の先生も、用事で今は席を外してるし。ほんとに一人。
そんなことを考えながら、目の前の投げ置かれたシャーペンを指の先で弄っていた。