想いはきっと痛くない

数分歩くと、段々と街外れのように、自然が多くなってきた。


「こんな場所あったんだ」

「静かだろ?」


前を向きながら彼が言った。

人がいない、わけではないし、もう少しで学校が始まるという時間にこんな方向に歩いているのを不審に思って、何人かチラチラ見られている自覚はある。

……でも、かといって引き返そう、帰ろう。とまでは思わなかった。


「……」

「大丈夫?」


振り返った彼がそう聞いてきた。


「え、うん。大丈夫だよ」

「そう」


大丈夫、と答えたけど……やっぱりどこか不安で、少しだけ歩みを早めて藤堂くんの横についた。

でも、やっぱり彼は何も言わず、変わらず歩いてくれた。

心地いいなって、ほんとに思った。


「よし、ここから坂登るよ」

「うん」


少しすると、彼が立ち止まってそう言った。

彼の指差した方を見ると、確かに割と急な坂がある。その上を見上げてみたら……。


「あ、ここ知ってる。展望台のところ」

「あ、知ってた? 来たことは?」

「小さい頃に一回だけあるみたいだけど、小さすぎて覚えてない」

「そっか」


そう一言言ってから、藤堂くんはまた歩き出した。

展望台行くのかな?ここまで来たんだしね。

少し遅れながらも、彼の後ろをまたついて行く。

ここまで来ると逆に人もいない。静かな坂道をひたすら登る。展望台ってだけあって結構長い。


「はぁー……疲れた」

「梓月意外と体力ない?」


上にようやくついたとき。そう洩らすと藤堂くんが笑いながらそう言ってきた。

正直、体力は多分ない。けど、ここまで笑われるとちょっとイラッっとくる。


「仕方ないじゃん、体育もでてないし!」

「悪かったって、怒んなよ」


相変わらず笑ってるし、反省の色は全くみえない調子で謝られる。

別に怒ってないし、いいんだけど。


「ま、そうだよな」


呟くような声が聞こえてきて彼を見るけど、特別変わった様子もなかったから大丈夫かな?


「で、展望台に行くの?」

「え、あー、違う違う」

「え、違うの?」

「平日、この時間開いてないし」


そうなんだ、知らなかった。

まぁ、でも普通なら学校行ってるもんなぁ。そう思ってスマホを見ると、もう朝のHRは終わってる時間。確実に遅刻だ。


「もうこんな経ってたんだ」

「梓月? 行くよ」

「え、あ、ちょっと待って」


いつの間にか先に進んでた彼。

全然気が付かなかったし、どこに向かってるんだろう?

ここから先はちゃんとした道なんてない。


「坂気をつけろよ?」

「ま、まだ上がるの?!」

「あと少しだって、ほらがんばれー」


藤堂くんはほんとに来慣れてる感あるし、置いてかれたら最悪。いや、藤堂くんだしないだろうけど。

草の道、ほんの少し緩やかになった傾斜を登る。この先どこかにつながってるのかな?

そのまま登ってると、スマホが鳴った。


「……あ!」

「どうかした?」


彼も聞こえたらしくて、こちらに近づいてきた。


「お、母さんから電話」

「……まぁ、来るだろうね」


一瞬、ほんとに一瞬。彼の表情が陰った気がした。

とりあえず、電話に出ることなくそのまま鞄の中にしまった。

その行動を見てか、彼が焦ったような、驚いたような反応をした。


「え、出ないの?」

「えー、うん。説明のしようがないし、後で連絡いれとく」

「……そ」

「うん、大丈夫。続き行こ!」


電話が来てから、いや。私がお母さんと言ってから反応が微妙な気がするけど……きっと彼なりの理由、があるんだろうな。

あんまり追及はするつもりないし、普段から来てるなら遅刻関係、だけじゃなくてきっと普段のサボりのことも連絡が入ってるはず。

放任主義?それとも……。

……よそ様の家庭に首を突っ込むつもりはないけど、反応が、気になるなぁ。