想いはきっと痛くない

カウンセリング室前は思ってた以上に人が少なかったからスムーズに入れた。


「え、ていうかハチマキ持ってる?」

「うん、昨日相田先生にもらった」

「じゃあつけてー……外行くか」


半ばふりまわされる形でハチマキを手に取って昇降口に向かいかけて、藤堂くんが止まった。


「? どうかした?」

「いや、人多いからやっぱ上行こう」

「……うん」


人が多いか、と言われるとそこまで多くはない気がしたけど、たぶんきっと何か思う部分があった。

だから何も聞かずついていくことにした。

二度目の屋上。今回は藤堂くんが扉を開けてくれた。

もう、誰もいなかった。やっぱりあの時はたまたまだったのかな?


「あ、ねぇ」

「ん?」

「私もつけるから藤堂くんもハチマキつけてよ」

「え……俺も?」

「ね! 一人はなんかあれだし」


さっき見せてくれたから持ってるのは知ってるし、せっかくならね?


「はぁー、しかたないなぁ」


すごい渋々という様子でまたポケットからハチマキを取り出した。


「やった!」


並んでハチマキをつける。

髪をあげるのは、久しぶり。できる限り、視線を避けたかったから。

でも、今は誰もいないし。


ハチマキは中学生以来だなぁ。


「よし!」


青空の下。紺のジャージに映える、白のハチマキ。

それだけで、何もしてないのに体育祭だと感じた。

胸がじわっと熱くなった。


「いいじゃん。白似合うね」

「ほんと? 中学生の時は青」

「あー、そっちも似合いそう」


下はもうすぐで午前最後の競技。

早く戻らないと昼休みには屋上に誰か来るかもしれない。

ハチマキをつけて、青空の下にいる。体育祭の歓声も、少し遠くだけど聞こえる。


「体育祭だ」


当たり前のことを言った。

それでも、隣で彼は「体育祭だね」と答えてくれた。


今年は、去年とは違う。

その事実が、やっぱりどこか嬉しかった。