想いはきっと痛くない

ついていって、教室に入るとちょうどリレーが始まったところ。

また、並んで窓から眺める。

四番の子は、確かに補欠をたてられたようで早い子が走っている。


「楽しそう……」


深く考えず、そのままの気持ちが声になって出た。

去年も出てはいない。

中学校はいやいや出てたっけ。


「そう? 暑いし、煩いし、練習の空気も……俺は好きじゃないな」

「そうなの?」


いつの間にか窓に背を向けて立ってる彼。

さっきまでの明るさはどこへやら、どこかつまらなそうに教室を見渡してる。


「同調圧力ってやつ? あと……うん」

「そっか」


ああ、わからなくないなぁ。そう思った。

けれど、やっぱり聞こえてくる声援とか、アナウンスはどこか楽しさが伺えるからそっちに引っ張られてしまう。

それでも、きっとあそこに行ったら私も、藤堂くんのように嫌になってしまんだろうな。


「梓月は……出たかった?」


まっすぐにこちらを見てくる。

出たかった?か。


「ううん、出たくない。けど……きっと」


きっと“普通”なら出たかった。


「きっと?」

「私じゃなかったら、出たかった、かな」

「なにそれ」


梓月じゃなかったら?と笑った。

あ、少し戻った。

いや、あれが素の藤堂くん、なのかな?


「そっか。俺じゃなかったら。俺も出たかったのかなー」

「運動自体、すっごく苦手、ではないと思うから」

「だなー、どっちかっていうと練習が嫌だし。でも練習に出ないと本番もできない」


なるほど、と頷いた。

核心には触れない。けど、少しだけいつもより深いところを出している気がする。

でも、不思議とこの間のように変な空気にはならなかった。