想いはきっと痛くない

でも、意外と少しすると出て行く音がした。その時に「あちーよ」と聞こえたので、まぁ、そういうことだろう。

少しして、私たちも出た。


「いやー、意外と来るんだな。焦ったー」


なんて彼は笑ってたけど。

前を歩く彼の表情は相変わらず見えないし、この後は、もう少ししたらうちの学年のリレー。

出るの、かな。


「どこ、行くの?」


思わず口をついて出た。

彼は驚いたようにこちらを振り返った。


「え?」

「……リレー」


そう言うと、彼は気が付いたようであっけらかんとした様子で言った。


「あー、出ないよ。出るわけないじゃん」

「そ、っか」


ふっと肩の力が抜けた感覚がした。

そっか。気づかないうちにそんな気を張ってたんだ。

一人になるのがそんなに嫌なんて、思ってもみなかった。

なんか、ほんと……こんなに弱かったっけ。


「補欠が入るよ。そもそも、多分俺が出ないだろうって組んでると思うし」

「そういうもの?」

「そういうもの」


そうなのかな。わかんないや。

でも……。


「そっか」


それで安心してしまう私がいた。

ここまで来るとカウンセリング室には戻りづらい。きっと保健室前はいろんな人いるだろうし。

どこに行くんだろう。


「……」


静かだから、より体育祭の歓声が聞こえてくる。

薄っすら、リレーのアナウンスが入った。


「教室戻るかー」

「うん」