想いはきっと痛くない

数分、のんびりと会話を交わして、プログラムが一つ終わったアナウンスが聞こえてきたとき、彼が立ちあがった。

まさか……もしかして、競技へ出るのでは?と一瞬ヒヤッとしたものが、胸を通った気がした。

でも、次の彼の言葉でその感覚は消えた。


「よし、移動するか!」

「え、どこに?」

「人の少ないところ」


彼が私を見ていたずらそうに笑った。

よく笑う。けど、今日は特に、色んな笑顔を見る。

きっとどこか、彼も隠し切れない行事としてテンションが上がってるんだろうか。


廊下を歩く彼の後ろをついていく。

方向的には階段で、下に行くと絶対的に生徒に出会う。

となると、上?

でも上は一年生の教室と……。


「あ、開いてるの?」

「……押してごらん?」


ニッと笑ってゆっくり押してみると。


「あ、開いちゃった……」

「よし、開けたの梓月だし共犯な」


そう一言言って、藤堂くんは気にすることなく入って行った。

ここに一人いるのは嫌だし、入った先で藤堂くんが「梓月も入ってきなよ。バレないって」と言ったので諦めてついていった。


「わっ……!」


風が一気に吹き抜けた。いきなりの勢いのある風に一瞬煽られた。


「あははっ! いい天気だな」


風に一瞬煽られた私を見て笑った後、藤堂くんは空を見上げた。


「屋上、来たの初めて」

「……ほんとはだめなんだろうけど、開いてんだよな」

「あ、すごい! 真上だから全部見える!」

「だから来たんだよ」


な?とものすごい笑顔で言われる。つられて笑顔で「うん!」と答えた。

藤堂くんが何か言ったようにも感じたけれどうまく聞き取れなかった。


「ん?」

「いや、何でもない」


そう言って彼はまた空を見上げた。


「眩しいなー……」


そう言う彼の口元は笑っていた。