想いはきっと痛くない

そうして、また何事もなく日が過ぎていき、今日は体育祭当日。


一応、観戦するかも。とは言っていたので、ジャージで登校した。

ハチマキも、一応貰った。
団結のためのハチマキだと思うけど。

そう思うと、どうしてもつける気にもどうにも思えなくて、鞄の奥底の入れこんだ。


カウンセリング室にいつも通り入った。

ぼんやりと過ごしていると、グラウンドから開会式を告げるアナウンスが聞こえた。

藤堂くんは開会式には出ているのか。そもそも来ているのか。

考えているとスマホが鳴った。


「あれ、藤堂くん?」


この時間だからさすがに開会式は出ていないことは確か。


連絡来を見ると、返信をすることなく教室に向かった。


急いで来て、教室前に立ってから……少し冷静になって、なんでこんなに急いできたんだろうって、なんだか一気に恥ずかしくなった。

でも、ここで立ち止まってるわけにもいかないので、とりあえず深呼吸して呼吸を整えた。
そして、教室の扉に手をかけた。


「お、来た来た。早いじゃん」


扉が開いたことに気が付いた彼がスマホから顔をあげてニヤッと笑いかけてくる。

早い、よね。わかってた。でも……。


「急に教室来てなんて連絡して来るからじゃん」

「ま、せっかく人のいない日。互いに教室いれる数少ない日だよ?」


な?とこちらを見てくる。

たしかに、冷静に考えるとそうかも。

ゆっくり、何回来たかもわからない教室に踏み込む。

誰もいない。いるのは藤堂くんだけ。それなのに、どこか緊張が全身に巡る。
それに気が付いたのか、藤堂くんが近づいてきた。


「大丈夫だよ」


彼は私がなんで保健室登校なのか知らない。私も、なんで藤堂くんがサボり魔として教室にい何のかもわからない。

だけど、察しているのか、はたまた気が付いているのか。優しく笑ってそう言ってくれるから、少しだけ、緊張が抜けた。

久しぶりに見る教室は、想像以上に広くて、想像以上に狭かった。変だけど、そうだった。私の手の中にある語彙だと、そう思った。

黒板は、体育祭で盛り上がってたのか黒板アートが大きく書かれていた。
数の限られた色で、なんでこんな色鮮やかに描けるんだろう。

真ん中には堂々とバトンを繋ぐ影の絵。周りには名前が書かれている。


「あ……走順?」

「みたいだな。俺四番目に書かれてるし」


左上、上から四番目。確かに「Rei」と書かれている。

っていうか……。


「四番目?! え、早いじゃん!」

「普通だよ」


普通ならこんな序盤に置かれないでしょ。

すると横からはぁ、とため息が聞こえた。


「体力測定はサボり切れなくて放課後呼び出されて測ったのが、たまたまいいタイムだったらしい」

「あー……なるほど」


そういえば図書館勉強一回だけ送れるって言ってた日あったなぁ。なんて思い出した。


「あと、梓月の名前もあるぞ?」

「え?」


藤堂くんの指先を追うと、確かに右上に「Mio」という文字が書いてあった。場所的にたぶん後半。

それでも、初めの一日しかほぼいなかった私の名前が書いてあるのが、ものすごく嬉しかった。


少しすると隣に立ってた彼が移動していくのを感じた。