想いはきっと痛くない

それから数分、いや数十分?数学を始める前に雑談して、少ししたら「じゃ、やるか」なんて彼が言い出してから残りの数学のわからない部分を教えてもらった。

終わって気が付けば授業終わりを告げるチャイムの鳴る数分前。


「さすが!」


なんて思わず言うと彼が何がと可笑しそうに笑った。

いや、だってきっと一人でやってたら永遠と云々言ってた気がする。


少しすると、チャイムが鳴った。それと同時に廊下が一気に騒がしくなった。


「カウンセリング室の割に、生徒がよく通るところにあるよな」


藤堂くんが呟くように言った。

たしかに、なんて昨日の帰りを思い返して思った。

気づかれたくない人、環境が嫌な人。ここに来る人の中に少なからずいると思う。
なのに……。


うちの学校のカウンセリング室は、保健室の隣にある。

でも保健室は、体育で怪我してもすぐ来られるように、奥の体育館と外のグラウンドの中間に位置してる。と、なると体育館と外のグラウンドから帰る生徒が鉢合わせる場所にあるわけで、得にこの時期は休み時間毎に騒がしくなる。


「ほぼ階段の目の前だもんね」

「そうだよね」


変なの。と彼が続ける。

でも、環境を考えると仕方のない、のかな。とも思う。

保健室とカウンセリング室が隣なのも。保健室がここにないといけないのも。

休み時間の十分間。帰る生徒と来る生徒。行き交う生徒たちの声を聞き流しながら改めて考えた。

その中、ほんの少しだけ、藤堂くんの眉が一瞬顰められたのも、気が付いてしまった。