想いはきっと痛くない

「あ……来週から本格的に体育祭練習が始まるのかな?」


帰り道、いつものように並んで歩く。

テストが終わった。それならきっとそろそろ本格的になるはず。


「あー、体育祭ね」


興味なさげに彼が返答する。

まぁ、出ないみたいだしね。

練習が始まれば少なからず、怪我人が増える。から。


「来週あたりからカウンセリング室かなぁ」

「……カウンセリング室。気になってたんだけど、別室登校とかじゃないんだな」


珍しく、彼が保健室登校のことに触れてきた。

別室登校、ねー。


「え……あー、うん。別室登校の子たちもいるよ。いる……」

「あ……まぁ、梓月が一人の方が俺いつでも行けるけどな」


そう言って笑いかけてくる。

ちょっと気を遣わせちゃったかも……。


「ずっと、このままってわけにも……行かないよね。わかってるんだけどねー」

「……」


この話やめよう。
今じゃない、気がする。

少し静か、になった空気をなんとか変えようと、体育祭の話に戻した。


「体育祭練習は、どうするの?」

「え、出ないよ?」

「そう? 成績とか……うそ、何でもない」

「なにそれ」


「変なの」とか言って笑ってる。けど、だって……今、揺れたんだもん。


ほんの少し、お互いの触れてはいけない部分に……。
お互い、無意識に触れてしまった。そんな気がする。