想いはきっと痛くない

「梓月ー」

「ふふっ、ほんとに来るじゃん」


次の日、彼は本当に朝から来た。


「そりゃねー、暇だし」


本来は授業時間。

でも、口には出さなかった。

昨日、保健室登校のことに彼は何も言わなかった。
だから、私も彼のこのサボりのことには何も言わない。彼から何か言わない限り。


「今日はー? お、国語」

「英語もあるよ。クラスの時間割通りだから」

「あ、そうなんだ。ま、時間割覚えてないけど」


そう言いながら彼はプリントを覗き込んでくる。
まぁ、興味ない人とか覚えるの苦手な人は覚えないよね。


「あ、座る?」

「ん」


彼は軽く返事して隣の椅子に座った。

向かいに座ると思ってたからびっくりしちゃった。
隣とか、近くとかに人がいること少ないから……。


「と、藤堂くんは、何の教科が得意なの?」

「俺ー? 俺は、理系かな」


理系……計算とか得意なのかな?
でも、なんかぽいかも。


「私文系だから理科とか苦手なんだよねー」

「教えよっか」

「え! いいの?」


クラスで授業受けてないから、呼び出しとかじゃないと聞けないし、先生に質問しにくかったんだよね。
マンツーマンなら質問しやすいかも。


「いいよ。その代わり、俺に歴史とか教えてよ」

「もちろん!」


教えてもらうだけじゃ申し訳ないし、お互い教え合えばね。
教えるのは自分の勉強にもなるし。

……って、そういえば。


「どこでやるの?」

「え? ここじゃないの?」


彼がハテナを浮かべいて聞いてくる。

私はここでもいいけど、彼が問題じゃない?


「先生とかは? 大丈夫なの?」

「……あ、そうじゃん」


完全に抜けてたっぽくて、急いで考え始めた。

意外と抜けてる?


「ふふっ、ごめん」


あんまりに慌てて考え始めるから、面白くてつい笑っちゃった。


「ちょ、ちょっと待って! 今探してるから!」

「ん、大丈夫だよ。はぁー……」


こんな笑ったの久しぶりかも。それもこんなに声出して。

……勉強する場所かぁー。そうね。じゃあ……。


「放課後の図書室とか」

「図書室……確かに。じゃあ、図書室ね」

「うん」


たった三日。
それでも、こんなにいろんなことを知れた。

これまでの私の生活からは考えられないほど新鮮。


まだ、まだまだ藤堂くんのことは、知れるのかな。

……そうしたら、私のことも。彼は知るのかな。