聖ちゃんは、私と目が合うと、意地悪に微笑んだ。
「また会えた」
玲央は優しく微笑んで、聖ちゃんから手を離した。
そして私に対して腕を広げた。
「おいでっ!俺んとこ、抱きついてきて!」
私が応えるわけがない。
すたすた近付いて、突き飛ばした。
「いったぁ…何も、そこまでしなくても…」
「玲央、大丈夫?」
聖ちゃんが玲央に寄り添った。
「嫌な女っ…」
「あんたにだけは言われたくない。…これで満足でしょ。あなたが求めていた、私と玲央の関係。もうあとは、好き勝手にしなよ」
私はそう言い放って、帰路についた。
これでいい、これでいいんだ。
私の恋は、これでエンディングを迎えていいんだ。
翌日。
「恋羽!今日、玲央に荷物届けてほしいの。私ちょっと早番になっちゃって」
「え…」
「よろしく!」
私の部屋に荷物を置いて、出て行ってしまった。
仕方無しに、自転車で病院に向かった。
「恋羽!」
満面の笑みだった。
昨日あんな横暴な態度とったことは忘れたのだろうか。
聖ちゃんはいなかった。
私は黙々と荷物の入れ替えをして、たまたま持って来た荷物の中にニット帽を見つけた。
ああ、抗がん剤治療の脱毛隠しか。
私はテーブルにその帽子だけ置いて、持ち帰る荷物を置いて、病室を出ようとした。
「待ってよ、似合ってるか見て!」
冷たい視線を送って、来た道を戻って行った。
なんでも似合うに決まってんじゃん…。
そう泣きそうになりながら。
自転車を全力で漕いだ。
早く離れたかった。



