魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「さて、ボクたちも向かおうか、ルーノ」
「……お前はそのままでいいのか?」
「ん? なんのことだい?」
「名前だよ」
「あぁ」

 パティと少しだけ距離を取りながら、ブルーノに話しかける。

「カーマイン公爵家の縁者だと思うのならば、いずれ向こうに連絡をするだろうさ。その時、偽名を使っていたら、カーマイン公爵家の名に傷がつくし、ボクへの信頼も失うかもしれない。それは嫌だからね」
「……なんとなくだか、ユニティの基準が分かってきたような気がするな」
「ブ……いや、ルーノ如きに、分かった気でいられるのは嫌なんだけど」
「なんだと!」
「ちょっと! さっさとついて来なさいよ! 急いでいるんだから!」

 ブルーノが声を張り上げたところで、ボクたちとの距離に気がついたらしい。パティがわざとらしく、速度を上げた。

「あの女、性格悪いぞ」
「何を今更」

 会話だけでなく、初対面時の遭遇から見て取れるだろうに。何を見ていたんだか、と一息吐いた瞬間、あることを思い出した。そう今更、といえば……。

「そういえばなんだけど、咄嗟とはいえ、助かったよ」
「なんの話だ?」
「ルーノ、という名前。いつの間に考えていたんだい?」
「これは……市井に出る時に使っている名だ」

 あぁ、なるほど。その名を使って、あの金髪の少女と、王都の街でデートをしていた、というわけか。何をそんなに言い淀む必要がある。

 ボクはブルーノの様子を不思議に思いながら、パティの後を追った。