魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「あぁ〜。分かったわよ。店でもなんでも、好きに見ていきなさい。でもそんな安っぽい服で、ウチの店に入られるのは困るわ」

 茶髪の女性は荷物を抱え直しながら、改めてボクたちを見る。上から下まで値踏みするような視線。脳内で計算しているのが見て取れた。
 手のひらを返すのか、無難に接するのか、考えているのだろう。ボクとしては、今まで通りの方が相手しやすくていい。いきなりすり寄って来られるよりかは、幾分マシだったからだ。

「そう言われても、手持ちの服はこれしかないんだよ。なんとかならないかな? 君の話を聞く限り、どうやら責任者のようだし」
「……服は提供できないわ。商売道具だからね。はいよって簡単に渡せるほど安いものじゃないの。だから……そうね。裏口、でいいのなら構わないわよ」
「さすがに服を要求する、なんて野暮なことは言っていないさ。あと、表の客に見えなければいいってことなら、ボクたちにとっても都合がいいしね」

 ヴァルクは広い街だけど、やって来て早々、乳母に似た女性に出会ってしまったのだ。これはミルドレッドに遭遇する可能性だって否定できない。さらにいうと、乳母本人にも。

 とはいえ、どこにいるのか、だいたいの見当をつけておかなければ、その可能性を高めてしまうことだってあり得る。透視魔法で姿を消せすことはできるが、今はブルーノという同行者がいるため、なるべくそれは避けたかった。

 人間に見せる魔法は必要最低限であること。これは魔女の鉄則だ。利用されないためには、相手に情報を与え過ぎないことが一番なのだ。

 だけど時にはリスクを冒す必要がある。