魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「待て待て。早まるな」
「それはこっちのセリフだよ。まったく。見直したと思ったけど、やっぱり間違いだったみたいだね」

 ボクはため息を一つ吐き、玉座に体を向けた。

「国王、またブルーノ王子様が脱走しないように、ちゃんと監視をつけてくれよ。追いかけて来られても困るんだ」
「ふむ。時に魔女ユニティ。一人になって、これからどうするのだね?」
「これから? 直近だと、カーマイン公爵に挨拶をしに行く予定だけど……国王。ボクの話を聞いていたか?」
「勿論。だからこそ尋ねたのだ」

 なんだろう。次の言葉を待たずに、ここから立ち去った方がいい気がする。

 けれどここは謁見の間。魔法の使用を禁止されている。それは魔女であっても例外ではない。国王よりも上であるためには、人間のルールも重んじるように、と他の魔女たちから口を酸っぱく言われていたからだ。

 人間と程よい距離で、上手に付き合っていくやり方なのだと。力はこちらが上でも、数は圧倒的に人間が多い。それがたとえ有象無象であっても、集団の力は大きな波となり、中にいる者でも止められないほど力となることがある。

 前世で見たSNSの誹謗中傷がまさにそれだ。言葉の刃が本物の刃物になったら、ボクたち魔女は、きっと太刀打ちできないだろう。

 だからボクは踵を返し、静かに謁見の間から立ち去ろうとした。だが、隣にいるブルーノに腕を掴まれてしまった。