魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

 すると突然、目の前に鏡が現れ、全身を映した。

「や、やめてー!! 醜い私を映さないで!」

 その私の気持ちに応えるかのように、今度は私ではなく、別のものが映し出された。

『ねぇ、あれ欲しいなぁ~。買ってよ』
『ダ~メ。金ないんだよ。あの女が死んだから』
『死んだって、まさかっ!』
『違う! 俺じゃないぞ。事故に巻き込まれたって聞いたんだよ』

 そうだ。あの女が私を「ATM」って言ったから、彼とは縁を切ろうとしたんだ。それで気持ちを切り替える目的で、乙女ゲームを始めたんだっけ。気分転換にもなるしって、進められて。気がついたら最中でプレイしていた。近くで事故が起きたことにも気づかないくらい……。

 彼とは正反対のギルバートに、今度は夢中になっていた。嘘が下手で、不器用で。優柔不断なギルバート。欲しい言葉も、行動もちぐはぐなところはあるけど、すべて心が籠っていた。彼みたいに、上辺だけのものじゃない。

「会いたいよ……」

 乙女ゲームの通りなら、現実の私の近くにいるんでしょう?

 私は鏡に手を伸ばした。ううん。そんな手ぬるいことなんてしない。これが幻なら、思いっきり叩いても痛くないはず。むしろその痛みで戻れるかもしれない。

「見たくないものしか映さない鏡に、用はないのよ!」

 叩き割ってやる勢いで、私は組んだ両手を振り上げた。

 ガシャン!