魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「まず、理由を聞こうか。ただ見学したい、というわけではないのだろう?」
「カーマイン公爵令嬢が、王都の郊外にある小さな街の祭りで、贄に選ばれたんだ」

 国王はボクの言葉を聞き、顔色を変えた。これがブルーノの言葉だったら一蹴されていたかもしれない。もしくは世迷言だと笑われていた可能性だってある。
 だけどボクは魔女だ。わざわざ国王を混乱させる悪戯を仕掛けることはしない。魔女だって暇じゃないんだ。

「……郊外、というと豊穣祭のことか? そんな近くにカーマイン公爵令嬢がいたとはな」
「最近戻って来た、ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢のことじゃないよ。その前に公爵家の養女となっていた、エリアル・カーマイン公爵令嬢の方だ」
「エリアル……あぁ、ひと月前に魔女殿が言っていた人物か」

 そう、ここ謁見の間で、国王がボクにブルーノの子守を頼んだあの日に語った、カーマイン公爵令嬢の入れ替え話。国王が覚えていてくれてよかった。

 エリアルは一歩前に出て、国王に挨拶をした。ピンクの髪によく似合う、アイボリーのドレスを身に纏ったエリアル。数年間、郊外にいたとはいえ、長いこと公爵家で淑女教育を受けてきたのだ。その所作は、一週間前まで平民だったとは思わせないほどだった。

「この姿ではお初にお目にかかります。カーマイン公爵家の次女、エリアルと申します」
「ほぉ。そのような可愛らしい姿だったとは。始めからその姿で会いたかったな」
「過分なお言葉、痛み入ります」
「そのような堅苦しい言葉はせんでいい。姿は違えど、幼き頃のそなたを知っているのでな。だが、魔女ユニティほど砕けられると困る」
「さすがにそこまでは……けれど、ありがとうございます」

 目の前にボクがいるというのにいい度胸だな、二人とも、と思ったが、今はそれに構ってはいられなかった。