魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「問題ありません。私はお嬢様が……お義姉様が戻って来たことを、心から嬉しく思っているんです。お父様とお母様が、いかにお義姉様を大事に想っていたのか、小さい時から見ていましたから。ですから今日、こちらをお持ちしました。喜んでもらえるといいのですが」

 エリアルは立ち上がり、ギルバートから荷物を受け取る。その足で公爵夫妻の元へ向かい、小さな箱を渡した。
 箱の中にあるのは、月のように輝く黄色い宝石がはめられたタイピンとブレスレットだった。月はカーマイン公爵家の家紋に描かれている。

「目利きは自信がないのですが、ユニティとブルーノ王子様が見立ててくださったので、大丈夫だと思います。気に入ってくださいましたか?」
「あぁ。だが、二つ足りないぞ?」
「えっ……」
「そうね。二つ足りないわ。でもこういうのは、私たちが用意するべきではなくて?」
「確かに。子どもに強請るのは、無粋だったな」

 顔を見合わせて笑う二人を見て、エリアルも嬉しそうに笑った。少しだけ恥じらいがあるのは仕方がない。エリアルはそこを、ずっとミルドレッドの居場所だと思っていたのだから。
 けれど公爵夫妻はずっと、そこに二つの椅子を用意していた。長いこと空席だった椅子が、ようやく埋められた瞬間だった。