魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

 カシルはボクに右手を差し出した。白い手袋をした手を。どうして気づかなかったんだろう。再会した時は遠目でも、林の中は……あぁ、薄暗くて分からなかったのか。

 時すでに遅し、とばかりに、ボクはカシルの右手を包み込んだ。

「右手の甲にできるのは、ギルバートルートの証。ようやく振り向かせたばかりなのに、こんな時に乙女ゲームのシナリオが発動するなんて……ユニティ、私、どうしたらいい? ギルバートに打ち明けるべき?」
「打ち明けるって何を? 贄姫に選ばれたこと? それとも転生者だということ?」

 どうして贄姫に選ばれたのか聞かれれば、カシルが本当は男爵令嬢で、エリアル・アルクだということを打ち明ける必要がある。建国祭という大舞台で贄に選ばれるのは貴族と決まっているからだ。
 疑似であるからこそ、その大役に平民は使われない。また、民衆にとっても印象が良くないからだ。

 どうしてカシルが贄姫に選ばれるのか問われれば、それが自分の運命だから、と。決まっていたことなのだと、口走ってしまうだろう。ギルバートを愛しているカシルならば。

「全部よ。もうカシルなんて偽名もやめて、エリアルとしてギルバートの横に立ちたいの」
「それは……ヒロインの運命を受け入れるってこと?」
「うん。だって、ハッピーエンドで終わるんだよ。ここはゲームの世界と似ているけど、違うでしょう? ミルドレッドの運命も変わった。私の運命だって……」

 カシルの言葉に、ボクは唇を固く結んだ。