魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「すみません。カシルの知り合いだと聞いて、思わず」
「一つ聞きたいんだけど、どうしてそんなに過剰に反応したんだい?」
「それは……カシルがこの街に来てから、知り合いを見たことも、聞いたこともなかったからです。あっ、この街にはカシルの友人や知り合いはいっぱいいますよ。俺が言っているのは……」
「分かっている。この街に来る前のってことだろう? あと、家族とかそういうの」
「……はい」

 でも普通は、これほど過剰に反応することはない。本当に気になれば、直接カシルに聞けばいいし、それで関係がギクシャクしたのなら、それっきりになる。今更現れたボクたちに関心を寄せるとも思えない。つまり……。

「それってカシルに何かあったってことだよね。しかも君には詳しいことを話していない。だからボクたちが現れたことに喜んだ。合っているかい?」
「まさにその通りです。実は……って玄関先で話すことではないですよね。どうぞ入ってください」

 ギルバートに促され、中に入る。お客を中に入れ忘れるほどカシルのことが気がかりだった、と思うと、二人の関係は良好だったのだろう。

 約一カ月前に見た、カシルの嬉しそうな顔は、ギルバートが引き出したもので間違いなさそうだ。そんなギルバートにすら、何も言わないなんて……一体、何があったんだ、カシル。