魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「母さんがいなくて、それで……」
「ダーラがいなくて取り乱したことは分かったわ。でもね、それとこれは違うでしょう? ミルドレッドを見捨てた理由にはならないわ。ううん、それだけじゃない。私たちの大事な娘を傷つけていただけでも許せないのに、事故に見せかけて殺そうとするなんて……言い訳なんか聞きたくないわ!」
「だ、だって――……」
「パティ……もうやめなさい」

 ダーラがパティの体に触れながら、静かに言い放った。

「嫌よ。だって、私……」
「やめなさい!」

 今度は、ダーラの声が強くなった。その一言で、パティの言葉が止まる。

「私も間違えたけど、お前はやってはいけないことをしたんだ。取り返しのつかないことを。そうですよね、公爵様」
「勿論だ。こちらにも落ち度があったとはいえ、この場から離れ、助けも呼ばずに放置していたことは、看過できない」
「……どうして、どうしてあの子ばっかり……」

 公爵の言葉を聞いていたのか、それとも聞いていなかったのか。パティはまるで壊れた人形のように「あの子ばっかり」と呟いていた。そこへ公爵がピシャリと言い放つ。

「それは君が、最初から間違っていたからだ。感情に流され、自分をコントロールできない者は、いずれ自滅する。そんな人間を、誰が助けるというんだ」

 見捨てたことじゃない。ミルドレッドを虐げたことじゃない。母親の愛情を盗られたと思い、抱いた最初の感情。それに流されたことを公爵は言っているのだ。

 果たして、それがパティに伝わったのか、は分からない。だけどパティはその場でしゃがみ込み、俯いたまま何も言わなかった。