魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

 工房の扉が再び荒々しく開かれたのは、それから四時間後のことだった。空はすでに薄っすらと明るくなっている。群青色から桃色へ。こういう空を、暁というのだろうか。

 ゆっくりと色づく空とは裏腹に、その下では緊迫した状況が繰り広げられていた。

「こんな朝早くから来るなんて、非常識にもほどがあるわ! 帰ってよ」
「非常識なのは分かっている。だけど非常事態なんだ。この意味が分からない、とは言わせないよ」

 この敷地内にダーラはいない。ブルーノが針子から聞いた話では、ダーラの旦那は経営に徹していて、工房に近づこうとしないらしい。つまり、ミルドレッドに危害を加える可能性があるのは、目の前にいるパティのみ。

 ボクとブルーノは裏口から訪ねに行ったら、こうして門前払いを食らってしまった、というわけである。だけどボクは、刻々と迫る危機感に焦りを感じていた。

 どうする? 強行突破は可能だ。風魔法でパティを吹き飛ばすか、変身魔法ですり抜けることもできる。

 そんな時、ブルーノがボクの前に出て、パティを取り押さえた。