魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

 痛い、と感じることよりも、パティの気迫の方が怖く、ミルドレッドはそれ以上言うことができなかった。けれど日中、ブルーノに言われたことが脳裏を過る。

 過信したからこそ、パティをつけあがらせた。この状況に甘んじていたのもまた、過信が招いたこと。

 そしてユニティに言った願い。この状況を変えたい。抜け出したい。

 願うだけではダメなことを、二人から学んだ。

「嘘なんて言っていない。そもそもダーラが工房に来ないようにしたのは、パティでしょう? どうしていると思ったの?」
「……母さんが私に隠れて、工房に出入りしていたことは知っているのよ」
「っ!」
「食事を運んだり、傷薬を運んだり。あんたに必要なものをちょくちょく届けていたことなんて、知っているんだから!」
「で、でも、ダーラはここに来ていない。本当よ」
「嘘よ! 母さんの特別はあんた! 母さんが行くところなんて、あんたのところしかないのよ!」

 パティがさらに、ミルドレッドの体を勢いよく押した。すでに逃げ道を塞がれていただけに、背中に当たっていた棚は大きく揺れ……次の瞬間、陳列していた数多の布ロールがバランスを崩し、棚から飛び出した。
 その下にはミルドレッドとパティがいる。逃げるにしても、前にはパティがいて逃げられない。いや、パティが素早く後方に移動しても、休む暇もなく、心をすり減らしながら働いていたミルドレッドに、そんな動きなどできるはずもないのだ。

 ドサドサッと布ロールが、埃を立てて落下した。積み重なった光景を見ているのは、パティ、ただ一人。ミルドレッドの姿は見えなかった。

「ど、どんくさい、あんたが悪いのよ」

 後退りしながら、パティは部屋を出ていった。積み重なった布ロールの山をそのままにして。