魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~

「何しているの? ほら早く行くよ」

 すると、ボクよりも大きな体をしているのに、まるで子犬のような顔をして駆けてきた。

 何がそんなに嬉しいのだろうか。ボクは首を横に傾けた。

 だけど、ここでやるべきことはすべてやった。ミルドレッドの事情を知り、覚悟も聞いた。また、白だった乳母をカーマイン公爵家に転移もさせた。
 あとは事情を聞いた公爵が、うまくやってくれるだろう。なにせ自分の領地内の出来事なのだから。ボクがブルーノに婚約破棄を言い渡されたり、正体がバレたりした後よりも、簡単なはずだ。

 ふふふっ、と軽い足取りで中庭に出る。

「そうだ。無断で帰るわけにはいかないよね。折角だから、挨拶して行こうか」
「……悪趣味だな」
「君に言われたくないよ。それに、確認したいこともあるし」
「確認?」

 ボクは首を傾げるブルーノを余所に、工房の反対側にある、立派な建物の裏口へと回った。確かパティは、裏口からならいいと言っていた。けれどボクたちの存在を忘れたかのようにマイナを叱ったのだ。当然……。