私の「嫌われ計画」が全部裏目に出ている件

一週間が経つ前に気づいてしまった。
これは、長期戦になる。

「凜、今日早く来られる? 音響の確認したい」

「はい、行きます」

「ありがとう」

想は当たり前のように私のスケジュールを把握している。私が図書委員で月曜の掃除当番で、金曜は塾があることも、いつの間にか知っていた。

「なんで私の予定知ってるんですか」

「聞いた」

「誰に」

「担任」

「個人情報では?」

「バンドの公式活動だから問題ない」

「問題あります」

でも想はもう別の方向を見ていた。
朔に声をかけて、資料を確認している。私のことはもう意識の外らしい。
こういうところが、なんとも言えず腹立たしい。
振り回されているのに、怒り続けられない。

「凜ちゃん、これ見て!」

湊が走り込んでくる。手にスマホを持っている。

「この新作スイーツ、来週発売なんだけど」

「……そうですか」

「一緒に買いに行かない? 発売日に並びたくて、でも一人は恥ずかしくて」

「私も十分恥ずかしいですけど」

「でも二人なら半分こだから」

この人の論理はよく分からない。でも、なぜか断れない。

「……発売日はいつですか」

「土曜!」

「土曜は塾が──」

「午前中に行って午後は凜ちゃんの時間に合わせる!」

「……分かりました」

ガッツポーズする湊。背が高いのに子供みたいだ。
その横で、蒼がにこにこしながら見ている。

「凜ちゃん、湊に懐かれてる」

「……分かってます」

「朔にも気に入られてるよ」

「どこが」

「毎日話しかけてるじゃん。朔、嫌いな人には声かけないから」

「業務連絡では」

「業務関係ないこと聞いてたよ。昨日、凜ちゃんの好きな教科とか」

……そういえばそんなことを聞かれた。

「なんでそんなこと調べるんですか、あの人」

「さあ。でも気になってるんじゃない?」

蒼はそこで少し表情を和らげた。

「俺も、凜ちゃんのことが気になってるよ」

「……蒼さんはみんなに言ってそう」

「言わないよ、特別な人にしか」

「……」

こういうセリフをさらっと言えるのが、来栖 蒼という人間だ。
嘘っぽくない。でも信じていいのかも分からない。

「凜ちゃんは、なんでここにいるんだと思う?」

蒼が少し真剣な顔で聞いてくる。

「……想くんに頼まれたから」

「それだけ?」

「……」

それだけじゃない、かもしれない。
嫌われようとしているのに、毎日足が練習室に向かっている。

「蒼さん、難しいこと聞かないでください」

「ごめんごめん。でも、答えはそのうち分かるよ」

蒼はまた笑った。

(その笑顔、なんか隠してる気がするんだけど)

そんな疑問を持ち始めた五日目だった。